【腹痛の診療】外来診療の備忘録

アドホック
こんにちは!今回は「腹痛」についてまとめます。
ヘルシー
主にプライマリケアの現場で役立つ内容です!

診療のポイント

急性腹症を見逃さないことが最重要です!

急性腹症とは緊急外科的処置などの迅速な対応を要する疾患群のことです。消化管の破裂や穿孔、虚血、捻転などの消化器疾患や、急性心筋梗塞や大動脈解離、大動脈瘤破裂などの心血管疾患が該当します。異所性妊娠や常位胎盤早期剥離などの産婦人科疾患も忘れてはいけません!

疼痛部位と解剖を考慮して疾患を鑑別していくことを基本とします。ただ「虫垂炎初期の内臓痛」や「急性心筋梗塞による心窩部痛」は、解剖学的に異なる部位に自覚症状が出現しますので、注意が必要です!

疼痛部位と原因疾患

原因疾患の精査の基本は、解剖を意識して鑑別していくことです!

急性腹症に該当する疾患は赤字にしました。

基本的には、疼痛部位と原因疾患の解剖学的な位置は一致しています。

ヘルシー
急性心筋梗塞や急性虫垂炎初期は、疼痛部位が解剖学的位置と一致しないことがあるので注意が必要ですね!
略語表記の疾患については、下記にエッセンスをまとめています。
NOMI(Non-Occlusive Mesenteric Ischemia)
非閉塞性腸管虚血です。腸間膜血管に器質的な異常がないにも関わらず、広範に腸管虚血や腸管壊死を引き起こす疾患です。重症化してから診断されることが多く予後は不良です。治療は血管拡張薬の血管内投与が行われますが、腸管壊死が認められる場合は、外科手術が必要になります。
SBP(Spontaneous Bacterial Peritonitis)
腹水の細菌感染による腹膜炎で、発症する人のほとんどが肝硬変を有しています。悪性腫瘍やネフローゼ症候群などの腹水でも発症するとされています。内視鏡検査や血管造影、肝動脈塞栓術などの医療操作が誘引として考えられています。腹水中の細菌の証明や好中球数の上昇により診断されます。治療は広域スペクトラムの抗菌薬投与を行いますが、再発率が高いことが知られています。
DKA(Diabetic KetoAcidosis)
糖尿病性ケトアシドーシスは高血糖緊急症で、インスリン欠乏とコルチゾールやアドレナリンなどのインスリン拮抗ホルモンの上昇による急性代謝障害です。病態としては、ケトン体によるアシドーシスと血管内脱水であり、前者のアシード シスが腹痛や嘔吐の原因となります。1型糖尿病患者のインスリン注射中断による場合と、2型糖尿病患者が重症感染症や心筋梗塞や脳梗塞などの心血管疾患に罹患した場合に発症します。膵炎やステロイドの使用、妊娠などが誘引となることもあります。治療は、不足したインスリンの投与および血管内脱水の補正を行います。なお治療中はカリウムを主体とした電解質補正が必要になります。

Commonだが奥が深い急性虫垂炎

急性虫垂炎はメジャーな疾患ですが、診断は難しさや見逃されやすい疾患です。

また虫垂が穿孔することで腹膜炎などの重篤な病態に進行すこともあります!

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急性虫垂炎は痛みの場所が移動することが特徴です。

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初期に自覚する内臓痛は、実質臓器の被膜が伸展するときや管腔臓器の拡張するときに感じる痛みです。神経叢を介した痛みのため、疼痛部位がはっきりと定まらないことが多いです。また痛みの性状は鈍痛が一般的です。
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体性痛は腹膜の痛みです。こちらは鋭い痛であることが多いです。
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急性虫垂炎の初期は、虫垂内に腸液が貯留することで生じる内臓痛ですので、心窩部を中心とした鈍い痛みを自覚します。その後炎症が腹膜まで波及するようになると体性痛となり、右下腹部に鋭い痛みを自覚するようになります。
ヘルシー
急性虫垂炎の初期には、解剖学的位置と異なる場所に痛みが出るので、注意が必要ですね

心血管系疾患を見逃してはいけない!

心窩部痛の鑑別疾患に急性心筋梗塞を挙げました。

腹痛は消化器系疾患から鑑別を進める方も多いと思いますが、仮に急性心筋梗塞が腹痛の原因であった場合、精査をしている間に心筋壊死が進行し、致死性不整脈など重篤な合併症を引き起こしてしまうかもしれません。

また心筋梗塞の中でも下壁梗塞の場合には、交感神経の遮断により消化管の蠕動運動が亢進することにより、悪心・腹痛・下痢という胃腸炎を疑うような症状を呈することがあります!

高齢者や動脈硬化リスクの高い人が腹痛を主訴に来院されたら、ルーティンとして心電図を記録しておくことをオススメしています!

アドホック
明らかな虚血性心電図変化がなかった場合、次に心房細動がないかを確認しておきましょう!「心房細動→腸間膜動脈閉塞」の可能性があるかもしれません!
またエコーやCTなどの画像評価の際には、腹部大動脈瘤の切迫破裂や大動脈解離などがないか、大血管にも一度は目を向けるようにしておきましょう!

胃腸炎と誤診しないための心得

嘔吐や下痢を随伴している場合、胃腸炎と診断したくなります。

ただ重症疾患が隠れていないか、常に疑うよう心がけましょう!

ヘルシー
胃腸炎はゴミ箱診断と揶揄されることがありますが、診断する前に注意が必要な疾患を整理しておきます!
胃腸炎と診断する前に鑑別すべき疾患
・急性心筋梗塞
・急性虫垂炎、腸閉塞、消化管出血
・糖尿病性ケトアシドーシス
・小脳及び脳幹部の出血や梗塞
アドホック
「めまいの診療」で取り上げましたが、小脳の出血や梗塞では激しいめまいと一緒に嘔気・嘔吐を伴うことが多くなります。小脳出血で脳浮腫で脳幹部が圧迫され、胃腸炎だと思っていたのに帰宅後に心肺停止になってしまったなったら、大変です!
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ヘルシー
また若い女性の異所性妊娠や男性の精巣捻転などの産婦人科疾患や泌尿器疾患も、頭の片隅に置いておきましょう!
アドホック
急性心筋梗塞が消化器症状が主訴になりうることや、糖尿病性ケトアシドーシスではアシドーシスにより悪心や腹痛を呈することはこの記事でも紹介しました!

おわりに

アドホック
「腹痛」の診療を行う上で、最低限注意すべき点をまとめてみました
ヘルシー
鑑別疾患が多くて大変ですが、急性腹症を見逃さないよう慎重に診療しましょう!特に心血管疾患などの消化管疾患以外の鑑別疾患の検討を忘れないことが大切です!
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