【論文の型】知って得する「医学論文の構成」のお話【アドホック便】

アドホック
こんにちは!アドホックです。
ヘルシー
アシスタントのヘルシーです!
アドホック
【アドホック便】では、私が気なるものをジャンルを問わずに、色々とご紹介しています。
今回は「医学論文の構成」についてお話しようと思います。
なおご紹介する論文の内容はについて改めて説明します。
せっかく手をつけるのでその結論だけ最初にお伝えします。
新型コロナウイルスの抗体保有者は、半年間、再感染リスクが低下する!
この記事では論文解説よりも「医学論文の構成」を中心に説明しています。

まずはConclusionで結論を確認!

では研究内容について確認していきましょう!

ヘルシー
最初に「Conclusion」だけ見てみましょう!
CONCLUSIONS
The presence of anti-spike or anti-nucleocapsid IgG antibodies was associated with a substantially reduced risk of SARS-CoV-2 reinfection in the ensuing 6 months.
「研究の結論:抵スパイク抗体もしくは抗ヌクレオカプシドIgG抗体の存在は、SARS-CoV-2の再感染リスクを、6ヶ月にわたって実質的に低下させた」になります。
ヘルシー
「新型コロナウイルス感染症に対して抗体があると、半年間は、再感染リスクが減る」というのが論文の主張であることが分かりました!
血液検査により「2種類の抗体」が測定されていて、具体的にはウイルスの構造物である「スパイク」と「ヌクレオカプシド」に対する抗体が測定されています。
ヘルシー
抗スパイク抗体または抗ヌクレオカプシドIgG抗体のことですね!
下図「B」の「④がヌクレオカプシド」「⑦がスパイクタンパク」になります。
引用:Wikipedia
ウイルスのおおよその構造が分かればオッケーです。
「抗体保有は再感染のリスクが低下させる」という前向きな研究のようですね!

研究の概要

改めて順を追って論文を読んでいきましょう!
ヘルシー
まずは「Background」です!

BACKGROUND
The relationship between the presence of antibodies to severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 (SARS-CoV-2) and the risk of subsequent reinfection remains unclear.

引用:Sheila F. Lumley, B.M., B.Ch., Denise O’Donnell, B.Sc., Nicole E. Stoesser, M.B., B.S., D.Phil., Philippa C. Matthews, F.R.C.P., D.Phil., Alison Howarth, Ph.D., Stephanie B. Hatch, Ph.D., Brian D. Marsden, D.Phil., Stuart Cox, Tim James, Ph.D., Fiona Warren, B.Sc., Liam J. Peck, D.Phil., Thomas G. Ritter, B.A., et al., for the Oxford University Hospitals Staff Testing Group*. Antibody Status and Incidence of SARS-CoV-2 Infection in Health Care Workers. N Engl J Med. 2020 Dec 23;NEJMoa2034545.

「重症呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対する抗体の存在と、その後の再感染のリスクの関連は、未だ明らかになっていません」ということですね。

ヘルシー
なるほど!体内の抗体に防御効果があるのか、ぜひ知りたいですね!
アドホック
研究に行うに至った背景(経緯)を、最初に説明しています。
ちなみに「重症呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)」というのがウイルスの名前、
このウイルスによって引き起こされるの感染症を「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)」と表現することが多いです。
ヘルシー
次は「Methods」です!
METHODS
We investigated the incidence of SARS-CoV-2 infection confirmed by polymerase chain reaction (PCR) in seropositive and seronegative health care workers attending testing of asymptomatic and symptomatic staff at Oxford University Hospitals in the United Kingdom. Baseline antibody status was determined by anti-spike (primary analysis) and anti-nucleocapsid IgG assays, and staff members were followed for up to 31 weeks. We estimated the relative incidence of PCR-positive test results and new symptomatic infection according to antibody status(後略)
「英国のオックスフォード大学病院で実施された症候性/無症候性検査に参加したスタッフの方のうち、血清検査で陽性もしくは陰性が確認されたスタッフの方を対象に、PCR検査で確認されたSARS-CoV-2感染の発生率を調べました。もともとの抗体保有の状態は、抗スパイクタンパク抗体と抗ヌクレオカプシドIgG抗体を解析することで決定され、対象のスタッフは31週間フォローアップされました。PCR検査陽性と新規症候性感染を、抗体の保有の有無で層別化して評価しました。」になります。
ヘルシー
急に難しくなりました…もう論文が嫌いになりました…
アドホック
確かに「Methods」から急に読みにくくなりましたよね…
ここからは論文を深掘りするのではなく「論文の構成」について考えてみましょうか!
論文を読んだ方なら経験があると思うのですが、
「Introdction」までは調子よく読めていたのに、
「Methods」のセクションになった途端によく内容が分からなくなってしまうことがあります。
実は「Methods」は表現が難しくなる傾向にあるのです。
ここで躓いてしまうことは致し方ないことでもあります。
その理由をご説明します。
「Methods」が読みにくいのには「理由」があります!

医学論文の構成

医学論文は「研究の背景」「研究の方法」「研究の結果」「考察・結論」という4部構成になっています。

ヘルシー
抄録も4部構成が基本でしたね!
ここからは極論になりますが、この中で論文の執筆者の本質的な成果というのは、
ほぼ「研究の方法」と「研究の成果」のセクションに集約されます。
ヘルシー
それは意外な見解です!
アドホック
あくまで「極論」とご理解ください。
でもこの視点は役立ちますよ!
イメージは下の図のようになります。
アドホック
この図を提示したくてこの記事を書きました!
最初に一般的な事項から話が始まり、だんだんと研究の根幹に誘導するのが「Background/Introduction」の役割です。
アドホック
読者の皆さんに今回の研究の必要性を分かってもらえるために、まずは大きなテーマから書き出します。
ヘルシー
などほど!それで最初の方は馴染みのある内容から始まるので、読んでいて意味が比較的簡単に内容が入ってくるのですね!
そして「Methods」と「Results」で研究成果をお披露目します。
抄録の概要をご説明した際に「Methods」は「再現性が重要」と言いましたね。
最初の「Background/Introduction」や最後の「Discussion」は、多くの論文を引用して構成することが一般的です。
そこに引用されている論文は、すでに世に公開されているものです。つまり一定の科学的価値があることが、掲載された雑誌によって確認がされています。
なので「Background/Introduction」や「Discussion/Conclusion」の一部分は、既に検証された内容が記載されているのです。
ただ「Methods」と「Results」は今回の研究の完全オリジナル部分です。
特に「Methods」が研究の屋台骨になります。
ここに問題があると、得られた結果も信頼性が低下してしまいます。
そこで「Methods」は詳しく説明する必要があるのです。
今回の論文であれば、対象者の詳細、研究デザイン、新型コロナウイルスの診断方法、抗体の検査方法やそれに使用した具体的な検査キットの名称、結果を導くための統計解析の方法などが、詳細が記載されています。
また字数の都合で本文に記載できなかった事項に関しては、補足資料(Supplementary Appendix)に記載するほどです。
仮に他の研究者が、同じ方法で研究を行い、得られたデータを論文と同じ方法で統計解析した場合に、同一の結果を得られること、それこそが非常に大切と考えられているからです。
アドホック
「再現性」は科学の大切な理念です。
それを論文中でアピールするのが「Methods」の役割になります。
ヘルシー
「Introduction」と「Methods」では論文の雰囲気が変わるのはそういった理由なのですね!確かに「Methods」の記載に執筆者は神経を尖らせますよね。
特に論文は「査読」という過程があります。
これは同じ専門分野の研究者からさまざまなツッコミを受けるものなのですが、
やはり同業者の目は厳しい指摘の多くが、このMethodsに向けられる印象です。
なのでMethodsの記載は専門的で、具体的で、詳細になるのです。
アドホック
「Methods」で読むのを中断してしまう気持ち、本当によく分かります。
最初うちは「Methods」は何となく目と通す程度で、細かいところまで意味が分からくても前に進んでしまうのがいいと思います。
ヘルシー
割り切りも大事です!
「Methods」と「Results」は研究のコアですが、専門的で詳細な記述が多くなり、どうしても読みにくくなってしまう傾向にあります。
アドホック
私も専門分野以外の論文になると「Methods」で頻繁に躓きますよ…

BackgroundとConclusionだけ目を通してみる

最後に難しい「Methods」と思い切って「Results」も飛ばして内容を繋げてみましょうか!

ヘルシー
論文に執筆者の方には申し訳ないですがお許しください…

BACKGROUND
The relationship between the presence of antibodies to severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 (SARS-CoV-2) and the risk of subsequent reinfection remains unclear.

(中略)

CONCLUSIONS
The presence of anti-spike or anti-nucleocapsid IgG antibodies was associated with a substantially reduced risk of SARS-CoV-2 reinfection in the ensuing 6 months.

引用:Sheila F. Lumley, B.M., B.Ch., Denise O’Donnell, B.Sc., Nicole E. Stoesser, M.B., B.S., D.Phil., Philippa C. Matthews, F.R.C.P., D.Phil., Alison Howarth, Ph.D., Stephanie B. Hatch, Ph.D., Brian D. Marsden, D.Phil., Stuart Cox, Tim James, Ph.D., Fiona Warren, B.Sc., Liam J. Peck, D.Phil., Thomas G. Ritter, B.A., et al., for the Oxford University Hospitals Staff Testing Group*. Antibody Status and Incidence of SARS-CoV-2 Infection in Health Care Workers. N Engl J Med. 2020 Dec 23;NEJMoa2034545.

「研究の背景:重症呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対する抗体の存在と、その後の再感染のリスクの関連は、未だ明らかになっていません」

(中略)

「研究の結論:抵スパイク抗体もしくは抗ヌクレオカプシドIgG抗体の存在は、SARS-CoV-2の再感染リスクを、6ヶ月にわたって実質的に低下させた」

ヘルシー
綺麗に繋がっていますね!
「新型コロナウイルスに対する抗体を保有していることと再感染リスクについてまだ分かっていなかったので、この研究を行ったところ、抗体の存在は6ヶ月間に渡って再感染のリスクを低下させることが分かりました」ということですね!
アドホック
論文の主張が理解できましたね!
「Conclusion」だけ目を通せば執筆者のメッセージが大まかに理解できます。
それに加えて、比較的読みやすい「Background」を付け合わせると、より分かりやすくなりますね!

おわりに

アドホック
お疲れ様でした!
今回は「医学論文の構成」ついてお話しました。
ヘルシー
「Methods」の内容が難しい理由も分かりました!
最初から論文が読めなくて当たり前です。
分からないところは気にせずにサラッと流しましょう!
アドホック
最後までお読みいただきありがとうございました!
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