


突然ですが皆さん、意識して体を動かすよう心がけていますか?
運動が健康に良いのは皆さん理解されていると思います。
でもなかなかその時間は取れないですよね。
そこで今日は、生活強度を上げる具体的な方法を一緒に考えていこうと思います。

オススメの記事の読み方をご紹介しています。
未読の方はぜひご覧になってみて下さい。
身体活動量を増やすこと、特にたくさん歩くことで、脳卒中のリスクを減らすことができるという主旨の論文を引用してご紹介します。生活強度を高めることの重要性を学びましょう!さらにこの記事では、生活強度を高めたり、その他の健康習慣の実践に役立つ「行動変容」という考え方を、具体例を交えながら解説します。運動習慣はもちろん、あらゆる習慣を定着させる上で役立つ情報ですので必見です!
活動量と脳卒中の関係について
ウォーキングが寝たきりを防ぐ!?
活動量を増やすことのメリットや、早歩きの多大な恩恵については以前にご紹介しました。
アドホックこんにちは。ドクターアドホックです。ヘルシーアシスタントのヘルシーです。アドホック突然ですが皆さん、日頃から意識して体を動[…]
健康に欠かせないウォーキングですが、ここでは今回の記事のイントロダクションとして、
過去にご紹介していない医学論文のご提示から初めていこうと思います。


重篤な病気という印象です。

そうですね。仮に死に至らなくても、手足が不自由になったり、言葉が出にくくなるなどの後遺症が残って、生活が不自由になるのもこの病気の怖いところですよね。
脳卒中は死に直結する重篤な疾患です。
実際に日本の死因の「第4位」にランクインしています。
さらに脳卒中は、仮に命は助かったとしても、重篤な後遺症を残してしまう疾患です。
特に後遺症については、患者本人だけでなく、介護者(家族などの身の回りの方)の負担も大きくなります。
何より発症予防が大切です!

この重篤な脳卒中に関して、ウォーキングがリスクを下げることが報告されています!
1998年の「Stroke」誌からの報告です。ちなみに「Stroke」は「脳卒中」という意味の英単語です。
This was a prospective cohort study of 11 130 Harvard University alumni (mean age, 58 years) without cardiovascular disease and cancer at baseline.
心疾患や癌の既往のない1万1130人のハーバード大学の同窓生(平均年齢58歳)を対象にした前向きコホート研究です。

「コホート(cohort)」というのは集団という意味です。この研究では、同じ大学の同窓生という集団の方々を解析対象としたという意味ですね。
また「前向き(prospective)」というのは、観察開始日を設定した、その後に病気を発症するかどうかを検討した研究を表現します。基準日より未来に発生するイベントを評価する、つまり時間軸が前向きということです。

そして最初に結論です!
Physical activity is associated with decreased stroke risk in men.
「身体活動量は男性における脳卒中のリスク低下を関連していた」ということです!

結果の詳細
活動量を増やすと脳卒中を予防できるとのことですが、もう少し詳しく結果を見ていきましょう!
まず活動量の評価方法ですが、アンケート調査により評価されました。
Men reported their walking, stair climbing, and participation in sports or recreation on baseline questionnaires in 1977.
「研究参加者の男性達は、1977年の調査開始時のアンケート調査で、歩行距離や階段昇降、スポーツやレクリエーションの参加の状況を回答した」とのことで、そのデータを使用して活動量をが算出されています。
This assessment of physical activity has been shown to be reliable and valid.
「この活動量の評価方法は信頼性や妥当性は示されている」とのことです。
では結果を見ていきましょう!主要な結果は下記の図になります。
横軸は先ほどの方法で評価した活動量です。1週間あたりの消費カロリー数で5群に分けられています。
縦軸は脳卒中発症の相対リスクを表しており、数字が「1.0」を超えると脳卒中のリスクが高まることを示しています。
この図の説明は以下の通りです。
For total energy expenditure of <1000, 1000 to 1999, 2000 to 2999, 3000 to 3999, and ≥4000 kcal/wk, the relative risks of stroke, adjusted for age, smoking, alcohol intake, and early parental death, were 1.00 (referent), 0.76 (95% CI, 0.59 to 0.98), 0.54 (0.38 to 0.76), 0.78 (0.53 to 1.15), and 0.82 (0.58 to 1.14), (後略).
「1週間あたりのエネルギー消費量が<1000kcal、1000-1999kcal、2000-2999kcal、3000-3999kcal、≧4000kcalのそれぞれの、年齢や喫煙、飲酒量、若年での親の死亡の家族歴を補正した脳卒中の相対リスクは、0.76(95%信頼区間0.59-0.98)、0.54(95%信頼区間0.38-0.76)、0.78(95%信頼区間0.53-1.15)、0.82(95%信頼区間0.58-1.14)であった」という内容が記載されています。
特に1週間あたり2000kcal-2999kcalのエネルギー消費している方が、
エネルギー消費量1000kcal未満の運動習慣のない人と比較して、最もリスクが低い(46%のリスク低下)という点は注目です。
さらに1週間あたり1000kcal-1999kcalのエネルギー消費している方は、
エネルギー消費量1000kcal未満の運動習慣のない人と比較して、脳卒中のリスクが34%低下することが分かります。
結果の信頼性を高めるために年齢などを「補正」していますが、これに関しては下の記事で解説しています!
アドホックこんにちは。ドクターアドホックです。ヘルシーアシスタントのヘルシーです。アドホック皆さんは普段ある時のスピードを意識したことはありますか?[…]
ただ週に3000kcalを超えると、リスク低下の程度が下がってしまいます(U字型)。
(統計学的にはエネルギー消費量1000kcal未満の運動習慣のない人と比較して、リスク低下は有意ではありません)
明確な理由は定かではありませんが、論文中には以下のような論文を引用しています。
It is unclear why stroke incidence rates exhibited a U-shaped relation to physical activity in this study group. Two of 3 randomized trials specifically testing exercise of different intensities suggest that higher-intensity physical activity is less effective in decreasing blood pressure than lower intensity activity.
「この研究の集団において、身体活動量と脳卒中の発症リスクの関係がU字型になる理由は定かではない。運動強度の違いと血圧との関連を検討したランダム化研究において、3つのうち2つの研究で、高強度の身体活動は低強度のものより降圧効果が低くいことが示唆された」と述べられています。
高血圧は脳卒中のリスクです。
その高血圧に関しても、運度強度が高ければ高いほどよいという訳ではないようですので、
この論文の結果と方向性は類似しています。


さらにこの論文では、「具体的にどんな運動が良いのか?」ということも検討されています。その中でとにかくたくさん歩くことが効果的!という結果が得られました。
簡単に説明します。
1週間あたりの歩行距離で4つのグループに分けれられています。
歩行距離が最も少ないグループは、1週間あたりの歩行距離が5km未満です。
反対に歩行距離が最も多いグループは、1週間あたりの歩行距離が20km以上です。
歩行距離が最も少ないグループと比較して、他の歩行距離のグループの脳卒中の発症リスクが、
「Multivariate Relative Risk (95% CI)」という欄に記載されています。
反対に歩行距離が最も多いグループの欄を見ると、「0.71(0.52-0.96)」と記載されています。
これは「1週間で20km以上歩くグループの人は、1週間の歩行距離が5km未満のグループと比較して、
脳卒中の発症リスクが0.71倍だった」と解釈できます。

一般の方の歩行速度は「80m/分=4.8km/時」ですので、1週間に20km以上歩くには、時間にして「4時間30分」ですね!1日あたりに換算すると「約40分」です!

早歩きをすればさらに時間は短縮されますので、単純に「ウォーキングを1日30分!」でどうでしょうか?
コラム:有意水準と信頼区間について
統計解析はあくまで確率計算です。色々な研究の結果を統計を使って解析をしますが、シンプルに「結果が偶然起こったことなのかどうか」と検討していることと言えます。この「偶然かどうか」というのを数学的に処理する場合には、具体的な数字で表現する必要があり、頻用される基準が「有意水準5%」です。結果が「偶然起こった可能性が5%未満」の場合に、統計学的には「偶然ではない(有意である)」と判断します。
では次に95%信頼区間についてです。「標本」と「母集団」という用語の説明から始めます。「母集団」とは、対象集団「全体」のことです。統計で知りたいのはこの母集団がどうなっているのかということですが、現実は対象集団全員のデータを取得することは困難です。そこで対象集団の代表者の方々のデータを取得し、その結果で母集団の方々がどうなっているのか推測しようと考えました。この代表者の方々を「標本」と呼び、実際の研究のデータ取得および解析対象者です。あくまで推測ですので、正確に母集団全体の結果を計算することはできませんので、「標本の解析結果から推定した母集団の真の値は、この範囲内にあります」という形で表現します。この母集団の真の値が含まれる区間のことを「信頼区間」と呼びます。「信頼」と枕詞は、「統計学的に信頼できる」という意味になり、信頼区間内に母集団の真の値が含まれる確率が95%の区間とすることが一般的です。
最後にこの信頼区間の表記方法です。例えば、この健康習慣のブログ定期的に読んでいる持病のない50代の男性1000人の方と比較して、同じく持病のない50代の男性でこのブログを読んでいない1000人が、10年間でどれくらい心筋梗塞になるかを研究したとします。前向きコホート研究で、Cox比例ハザードモデルという解析したとします。すると心筋梗塞を発症するハザード比が1.5(95%CI 1.2-1.8)と計算されたとします。1.5が点推定値と呼ばれ、調査した2000人の方(標本)において、このブログを読むことで心筋梗塞の発症リスクが1.5倍に上昇するということを表しています。カッコ内の1.2は下側信頼限界、1.8は上側信頼限界と呼ばれます。これは「1.2-1.8の間に、持病のない50代男性全体(母集団)において、このブログを定期的に読まないことによる心筋梗塞の発症リスクが、統計学的な信頼性をもって存在すると推定される」ということを意味します。
実際に動き始めるために!「行動変容」のプロセスについて学ぶ!

早くウォーキングを始めたくて、ウズウズしています!

正確な情報を伝えようとすると、ついつい説明も長くなってしまいまして…
でもその「ウズウズしてきた」って気持ちの変化が実は重要なんですよ!

でも必要以上に歩いたり動いたりするのは面倒な事には変わりないよ…

実際に運動というアクションをとるまで、どのような過程があるのでしょうか?まずは行動変容ステージモデルというものを紹介します。



レイジーさんも体を動かすことが大切なことは理解しているようですね。
「でも」という逆説の接続詞が聞かれるだけで、
無関心期からは関心期にステージアップしてくれています。
ではここからヘルシーとレイジーへの対応が変わってきます。
準備期へのアプローチ
まずはヘルシー、つまり「準備期」への介入です。
「準備期」への介入は、運動への自信をもってもらい、周りにサポーター作ってもらうといいでしょう!


今日は一つ前の駅で降りて、家まで早歩きしてみます!

慣れるまで最初は大変だと思いますけど、応援してますからね!

関心期へのアプローチ

ここでは画像を使って視覚的に説明してみます!
レイジーさん、今から自分の事を「ハリネズミ」だと思ってください。

ネガティブにイメージをさせる

ただ次第に腹回りの贅肉や、足の筋力の低下を感じるようになり、
少し動くのも大変に感じるようになってきました。
でも大丈夫、今は便利な時代です。
外に出なくてもパソコンひとつで必要なものは自宅まで届けてくれます。
こんな生活が続きいたことで、体力は低下していまいました。
今では少し歩くだけですぐに息が上がってしまい、
とうとうほとんど動かなくなってしまいました。


十分に運動不足のネガティブなイメージが印象付けられたようですね!
ポジティブにイメージさせる
今度は運動にポジティブなイメージをもってもらいましょう!
想像してみてください。
このブログをみて運動に興味をもったレイジーは、
面倒と思いながらもウォーキングを始めてみることになりました。





レイジーさんはウォーキングシューズを買いに行ったみたいですね!
さすがに極端な例ではありましたが、
ポジティブなイメージをもってもらい、準備期に移行させることが大切ですね。
無関心期へのアプローチ
意識を高揚させることや感情的な経験が重要されています。
具体的には、運動のメリットを知ることで意欲を高めたり、
運動不足で若い時のように動けない事に危機感を抱いたりすることです。
アンヘルシーがブログの閲覧で「無関心期」から「関心期」に移行したように、
自分が行いたいことのメリットを十分に理解することが大切です。
まとめ
・積極的なウォーキングで脳卒中のリスクを減らすことができる!
・行動変容のプロセスの知識を生かし、自分はどのステージにいるのかを把握した上で、適切なアプローチをとり、実行期に結びつける!


なかなかデータを見せられないと納得できないと思いますので、論文の図表を引用して説明しました。運動のメリットについて「納得」「理解」することが、行動変容のプロセスを進める上でも重要だと考えています。


誰ともいい感じにならないじゃん…
しばらく運動は辞めようかな…


やはり荒療治の反動が来てしまいましたね…
レイジーさんには、今度は正攻法で、ゆっくり納得いくまで運動のメリットを説明していきますね。
行動変容のプロセスは、必ずしも段階的に進むものではないですし、
場合によっては逆戻りすることもあります。
運動へのモチベーションが下がりそうな時、ぜひまたこちらのブログに遊びに来て、
運動への関心を取り戻してください。いつでもお待ちしています。
