アドホック こんにちは!今回は新型コロナウイルス感染症の治療薬やワクチンを中心に解説します!
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の悪い側面ばかり目に止まってしまい、日々の生活に不安を感じている方も多いと思います。
人にはポジティブな情報よりもネガティブな情報に注目し、優先的に記憶する傾向があり、ネガティブ・バイアス(negative bias)と呼ばれています。
ヘルシー 不安を感じているのはみんなも同じですので、過度に怯えないで下さいね!
ただワクチンの開発・承認などの明るいニュースも飛び込んできました。
今回は治療薬やワクチンを中心に解説していきますので、宜しくお願い致します!
2020年12月末時点で得られた情報を利用して作成した記事になります!
治療薬 アドホック このセクションは論文引用が多いので、大意を掴むだけで大丈夫です!
まずCOVID-19と診断された方のうち、重症例や重症化リスクを有する場合に治療薬が適応となります。
軽症例では、原則として治療薬は推奨されていないことに注意してください。
引用:日本感染症学会ホームページ「COVID-19に対する薬物治療の考え方」
治療薬は複数の候補がありますが、ここでは代表的なものを取り上げて説明します。
まず治療薬の大きな枠組みとして、既存薬の転用(drug repositioning)と、過剰免疫の抑制を土台としています。
レムデシビル 既存の抗ウイルス薬です。もともとはC型肝炎やエボラ出血熱に対して開発された薬剤です。
肺炎併発患者の入院日数短縮との報告があり、世界50ヵ国で承認されています。
ヘルシー 執筆時点で最もエビデンスの集積された薬剤と言えます。
Those who received remdesivir had a median recovery time of 10 days (95% confidence interval [CI], 9 to 11), as compared with 15 days (95% CI, 13 to 18) among those who received placebo (rate ratio for recovery, 1.29; 95% CI, 1.12 to 1.49; P<0.001, by a log-rank test).
引用:John H Beigel, Kay M Tomashek, Lori E Dodd, et al. Remdesivir for the Treatment of Covid-19 – Final Report. N Engl J Med. 2020;38319:1813-1826.
レムデシビルを投与された患者の退院までの中央値は10日であった一方、プラセボ投与患者の退院までの日数は15日であったということです。
ただその後にWHO主導の臨床試験では、レムデシビルによる死亡率の低下の効果は示されていませんでした。
Death occurred in 301 of 2743 patients receiving remdesivir and in 303 of 2708 receiving its control (rate ratio, 0.95; 95% confidence interval [CI], 0.81 to 1.11; P=0.50),
引用:WHO Solidarity Trial Consortium. Repurposed Antiviral Drugs for Covid-19 – Interim WHO Solidarity Trial Results. N Engl J Med. 2020. Dec 2;NEJMoa2023184
レムデシビルを投与された2734名のうち301名が死亡、コントロール群2708名では303名が死亡し、両者の死亡率に統計学的な有意差は認めなかったという結果でした。
WHOはレムデシビルの使用を推奨しないとの見解を示しています。
ファビピラビル 商品名アビガンで、既存の抗ウイルス薬です。日本で開発された抗インフルエンザ薬で、主に新型もしくは再興型インフルエンザ感染症に適応があります。
ヘルシー 日常診療であまり登場しない薬剤ですが、上記のように対象のインフルエンザ感染症の流行に備えて、国内に十分量の薬剤が備蓄されているとのことです!
開発元である富士フィルム富山化学が、非重篤な肺炎患者を対象に「症状の軽快とウイルス陰性化までの時間」を主要評価項目として実施したファビピラビルの臨床試験において、主要評価項目を達成したと報告しています。
引用:富士フィルムホールディングス株式会社 2020年9月23日ニュースリリース
2020年12月21日の厚生労働省専門部会は、有効性を明確に判断することが困難との見解を示しており、新型コロナウイルス治療薬としての承認は見送られています。
デキサメタゾン 抗炎症薬です。日常診療でも頻用されるステロイドです。
英国から報告された大規模臨床試験において、酸素投与や人工呼吸器管理が行われているCOVID-19患者の28日総死亡率が有意に低下させたことが報告されました。
A total of 2104 patients were assigned to receive dexamethasone and 4321 to receive usual care. Overall, 482 patients (22.9%) in the dexamethasone group and 1110 patients (25.7%) in the usual care group died within 28 days after randomization (age-adjusted rate ratio, 0.83; 95% confidence interval [CI], 0.75 to 0.93; P<0.001).
引用:RECOVERY Collaborative Group, Horby P, Lim WS, et al. Dexamethasone in hospitalized patients with Covid-19 – preliminary report. N Engl J Med. 2020 Jul 17.
2104名がデキサメタゾンを投与され、4321名が通常治療を受けました。デキサメタゾン投与群2104名のうち482名が、ランダム化後28以内に死亡しました。一方の通常治療群では、4321名のうち1110名がランダム化後28以内に死亡しました。デキサメタゾンによる通常治療群に対する死亡リスクは0.83(95%信頼区間 0.75-0.93)で、統計学的有意差が認められました。
アドホック 重症度が中等度以上の症例に対して、標準治療となる可能性があります。
シクレソニド 気管支喘息の治療に用いられる吸入ステロイド薬です。商品名のオルべスコの方が馴染みがあるかもしれません。
下記の通り抗SARS-CoV-2活性を有することが報告されています。
These observations indicate that the suppressive effect of ciclesonide on viral replication is specific to coronaviruses,
引用:Matsuyama S, Kawase M, Nao N, et al. The inhaled corticosteroid ciclesonide blocks coronavirus RNA replication by targeting viral NSP15. BioRxiv. 2020;95:e01648-20.
またデキサメタゾンと同様にステロイドであることから、抗炎症作用も期待されています。
軽症患者や肺炎の予防効果について検証が行われています。
ヘルシー 薬理作用を鑑みるに、効果が期待できそうですね!
ナファモスタット 膵炎やDICに適応のあるプロテアーゼ阻害薬です。
膵液中にはトリプシンなどは蛋白分解酵素が含まれ、膵炎の際の炎症の原因となります。その合成を抑制するのがナファモスタットです。
またトロンビンなどの凝固系に作用するタンパク質の合成も抑えることから、DICにも適応があります。
このナファモスタットですが、抗SARS-CoV-2活性を有することが本邦から報告されてました。
Here we established a quantitative fusion assay dependent on SARS-CoV-2 S protein, ACE2 and TMPRSS2, and found that nafamostat mesylate potently inhibited the fusion while camostat mesylate was about 10-fold less active. Furthermore, nafamostat mesylate blocked SARS-CoV-2 infection of Calu-3 cells with an EC50 around 10 nM, which is below its average blood concentration after intravenous administration through continuous infusion.
引用:Mizuki Yamamoto, Maki Kiso, Yuko Sakai-Tagawa, Kiyoko Iwatsuki-Horimoto, Masaki Imai, Makoto Takeda, Noriko Kinoshita, Norio Ohmagari, Jin Gohda, Kentaro Semba, Zene Matsuda, Yasushi Kawaguchi, Yoshihiro Kawaoka, Jun-Ichiro Inoue. The anticoagulant nafamostat potently inhibits SARS-CoV-2 infection in vitro: an existing drug with multiple possible therapeutic effects. Viruses. 2020;10;12:629.
ナファモスタットが気道上皮細胞のTRPRESS2(Transmembrane protease serine 2)を阻害し、ウイルスのスパイク蛋白の活性化を防ぐことで、ウイルスの侵入が抑制されると考えられています。
さらに人工心肺(ECMO:extracorporeal membrane oxygenation)や人工呼吸器管理が必要な重症症例に対して、ナファモスタットとファビピラビルの併用療法により、良好な治療成績が得られと報告されています。
引用:Doi K, Ikeda M, Hayase N, Moriya K, Morimura N. Nafamostat mesylate treatment in combination with favipiravir for patients critically ill with Covid-19: a case series. Crit Care 2020;24:392.
ヘルシー ECMOから離脱できることのは、本当に凄いことですよ!
ナファモスタットの有効性について、引き続き検証されています。
ワクチン 現在、欧米で承認されているワクチンは「mRNAワクチン」です。
ファイザー社・バイオンテック社により開発されたワクチンと、モデルナ社により開発されたワクチンの接種が開始されています。
mRNAワクチン アドホック mRNAワクチンについて簡単にご説明します。
まずワクチンによって期待することは、ウイルスに対して「免疫」を獲得することです。
そして免疫は「液性免疫」と「細胞性免疫」に大別されます。
液性免疫とは「抗体産生」による免疫です。B細胞という免疫細胞が、ウイルスに対して抗体を産生する能力を獲得することで、液性免疫が機能します。
一方の細胞性免疫は、T細胞という免疫細胞が、ウイルスを直接攻撃する能力と持つことで機能するものになります。
ヘルシー 開発されたワクチンは「液性免疫」と「細胞性免疫」の両方を獲得することが期待されています!
次にmRNAですが、これはタンパク質の「設計図」です。
mRNAワクチンは、ウイルスに免疫を有するタンパク質の設計図を、ワクチンとして投与することで、ワクチン接種者の細胞内でそのタンパク質を産生させ、免疫を獲得するというコンセプトです。
ウイルスはスパイク蛋白と呼ばれるタンパク質で覆われています。これはウイルスの遺伝子から作られた、ウイルス独自のタンパク質になります。
ワクチンには、このスパイク蛋白の全体もしくは一部の塩基配列を作る情報を持ったmRNAが封入されています。このmRNAからタンパク質が生成されることで、ワクチンに対する免疫が獲得できるのです!
ヘルシー mRNAがすぐに分解されずに、細胞内に取り込ませるのは大変なことなんですよ!
アドホック 自然免疫が過剰に反応してmRNAを分解しないよう、例えば脂質ナノ粒子(LNP)などが一緒にワクチンに封入されています!
mRNAワクチンの有効性と安全性 バイオンテック社とファイザー社により開発されたmRNAワクチン「BNT162b2 」について、
その有効性や安全性を確認していきましょう!
2020年12月10日にNEJMに掲載された論文を引用しながら解説していきます!
まず研究の背景は下記の通りです。
Severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 (SARS-CoV-2) infection and the resulting coronavirus disease 2019 (Covid-19) have afflicted tens of millions of people in a worldwide pandemic. Safe and effective vaccines are needed urgently.
引用:
Fernando P. Polack, M.D., Stephen J. Thomas, M.D., Nicholas Kitchin, M.D., Judith Absalon, M.D., Alejandra Gurtman, M.D., Stephen Lockhart, D.M., John L. Perez, M.D., Gonzalo Pérez Marc, M.D., Edson D. Moreira, M.D., Cristiano Zerbini, M.D., Ruth Bailey, B.Sc., Kena A. Swanson, Ph.D., et al., for the C4591001 Clinical Trial Group*. Safety and Efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine. N Engl J Med. 2020 Dec 10;NEJMoa2034577 「重症急性呼吸器症候群コロナウイルス 2(SARS-CoV-2)感染とそれに伴う新型コロナウイルス感染症(Covid-19)は、世界的な大流行となり、何千万人もの人々が苦しい状況に立たされています。安全で有効なワクチンが緊急に必要とされています」
ヘルシー ワクチンのニュースが報道されたときは、みんなが希望の光がさしたことに喜びを隠しきれませんでしたね!
ではここからが論文のコア部分になります。
In an ongoing multinational, placebo-controlled, observer-blinded, pivotal efficacy trial, we randomly assigned persons 16 years of age or older in a 1:1 ratio to receive two doses, 21 days apart, of either placebo or the BNT162b2 vaccine candidate (30 μg per dose). BNT162b2 is a lipid nanoparticle–formulated, nucleoside-modified RNA vaccine that encodes a prefusion stabilized, membrane-anchored SARS-CoV-2 full-length spike protein. The primary end points were efficacy of the vaccine against laboratory-confirmed Covid-19 and safety.
引用:
Fernando P. Polack, M.D., Stephen J. Thomas, M.D., Nicholas Kitchin, M.D., Judith Absalon, M.D., Alejandra Gurtman, M.D., Stephen Lockhart, D.M., John L. Perez, M.D., Gonzalo Pérez Marc, M.D., Edson D. Moreira, M.D., Cristiano Zerbini, M.D., Ruth Bailey, B.Sc., Kena A. Swanson, Ph.D., et al., for the C4591001 Clinical Trial Group*. Safety and Efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine. N Engl J Med. 2020 Dec 10;NEJMoa2034577 「16歳以上の人を対象として多国間プラセボ対象者盲検試験です。参加者は、21日間隔で 2 回プラセボを接種する群と、ワクチンBNT162b2(1 回 30µg)を接種する群に 1:1 の割合で無作為に割り付けられました。BNT162b2 は、SARS-CoV-2 全長スパイク蛋白をコードしており、脂質ナノ粒子を用いて製剤化されたmRNAワクチンです。Covid-19 に対するワクチンの有効性と安全性が、この研究の主要評価項目です。」
ヘルシー スパイク蛋白はウイルスに特異的なタンパク質でした 。
アドホック 脂質ナノ粒子をワクチンに封入することで、mRNAがワクチン接種者の細胞内に分解されずに届くよう設計されています!
研究結果です!有効性から確認していきましょう!
A total of 43,548 participants underwent randomization, of whom 43,448 received injections: 21,720 with BNT162b2 and 21,728 with placebo. There were 8 cases of Covid-19 with onset at least 7 days after the second dose among participants assigned to receive BNT162b2 and 162 cases among those assigned to placebo; BNT162b2 was 95% effective in preventing Covid-19 (95% credible interval, 90.3 to 97.6). (中略) Among 10 cases of severe Covid-19 with onset after the first dose, 9 occurred in placebo recipients and 1 in a BNT162b2 recipient.
引用:
Fernando P. Polack, M.D., Stephen J. Thomas, M.D., Nicholas Kitchin, M.D., Judith Absalon, M.D., Alejandra Gurtman, M.D., Stephen Lockhart, D.M., John L. Perez, M.D., Gonzalo Pérez Marc, M.D., Edson D. Moreira, M.D., Cristiano Zerbini, M.D., Ruth Bailey, B.Sc., Kena A. Swanson, Ph.D., et al., for the C4591001 Clinical Trial Group*. Safety and Efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine. N Engl J Med. 2020 Dec 10;NEJMoa2034577 「43,548 名が無作為化され、そのうち 43,448 例(BNT162b2 が 21,720 名、プラセボが 21,728 名)が注射を受けました。2回目の接種後 7 日目以降に、Covid-19 を発症した症例数はBNT162b2 接種群8名、プラセボ接種群162 名であり、BNT162b2 は Covid-19 の予防において 95%の有効率を示しました(95%信用区間 90.13%~97.6%)。(中略) 初回接種後に重症 Covid-19 を発症した10例は、9例がプラセボ接種、1例が BNT162b2 接種を受けていました。」
アドホック 有効性に関するデータは非常に重要です。本文中のグラフも提示させてください!
引用:
Fernando P. Polack, M.D., Stephen J. Thomas, M.D., Nicholas Kitchin, M.D., Judith Absalon, M.D., Alejandra Gurtman, M.D., Stephen Lockhart, D.M., John L. Perez, M.D., Gonzalo Pérez Marc, M.D., Edson D. Moreira, M.D., Cristiano Zerbini, M.D., Ruth Bailey, B.Sc., Kena A. Swanson, Ph.D., et al., for the C4591001 Clinical Trial Group*. Safety and Efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine. N Engl J Med. 2020 Dec 10;NEJMoa2034577 ワクチンは21日間隔で2回接種を行うというのが試験デザインでした。上のグラフは、1回目のワクチン接種から新型コロナウイルス感染症を発症した症例数を累積データとして示したものです。
1回目の接種から2回目の接種までの21日間で、BNT162b2接種群で39名、プラセボ接種群82名の感染が確認されました。この段階での有効率は52%でした。
その後は、BNT162b2接種群とプラセボ接種群で感染者数がさらに差が見られ、2回目のワクチン接種後から7日以降経過すると、有効率が95%になっていました。
ヘルシー グラフで表現されるとさらにその凄さが分かりますね!
続いて安全性についても確認しましょう!
The safety profile of BNT162b2 was characterized by short-term, mild-to-moderate pain at the injection site, fatigue, and headache. The incidence of serious adverse events was low and was similar in the vaccine and placebo groups.
引用:
Fernando P. Polack, M.D., Stephen J. Thomas, M.D., Nicholas Kitchin, M.D., Judith Absalon, M.D., Alejandra Gurtman, M.D., Stephen Lockhart, D.M., John L. Perez, M.D., Gonzalo Pérez Marc, M.D., Edson D. Moreira, M.D., Cristiano Zerbini, M.D., Ruth Bailey, B.Sc., Kena A. Swanson, Ph.D., et al., for the C4591001 Clinical Trial Group*. Safety and Efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine. N Engl J Med. 2020 Dec 10;NEJMoa2034577 「BNT162b2 接種群では、短期の軽度~中等度の注射部位の疼痛、疲労、頭痛の出現が特徴でした。重篤な有害事象の発現率は低く、ワクチン群とプラセボ群とその頻度は同程度でした。」
ヘルシー 安全性についても大丈夫だったのは安心です!
引用:
Fernando P. Polack, M.D., Stephen J. Thomas, M.D., Nicholas Kitchin, M.D., Judith Absalon, M.D., Alejandra Gurtman, M.D., Stephen Lockhart, D.M., John L. Perez, M.D., Gonzalo Pérez Marc, M.D., Edson D. Moreira, M.D., Cristiano Zerbini, M.D., Ruth Bailey, B.Sc., Kena A. Swanson, Ph.D., et al., for the C4591001 Clinical Trial Group*. Safety and Efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine. N Engl J Med. 2020 Dec 10;NEJMoa2034577 ヘルシー イベントの数だけで見るとワクチンの方が多くないですか!?
確かにイベント数はBNT162b2接種群で26.7%、プラセボ接種群で12.2%と乖離しています。
これに関して、ワクチンによる「transient reactogenicity events」をイベントとしてカウントしていることによるものと説明されていました。日本では副反応という表現にあたると思います。例えばその例として、BNT162b2接種群では64名にリンパ節腫脹が認められましたが、プラセボ接種群ではわずか6名でした。
副作用と副反応 ・病気の治療で薬を使用するときに、薬に期待する効果は主作用になります。これに対して、主作用とは異なる別の作用が副作用です。一般に、医薬品の使用によって、患者さんに不都合な作用に対して副作用と表現します。 ・今回のようなワクチン接種の場合、ワクチンによって免疫を獲得する効果が主作用です。この免疫獲得の過程で、免疫獲得以外の反応のことを副反応と呼びます。ワクチンの場合は、医薬品の副作用と区別して用いられます。ワクチン接種後の発熱や注射部位の腫れなどは副反応です。
有害事象 ・なおワクチン接種による副反応とは別に、接種後に起こった反応を総称して、有害事象と呼びます。ワクチン接種との因果関係は問われません。表現を変えると、ワクチン接種後に起こった事象は全て有害事象で、その一部がワクチンによって引き起こされた副反応となります。
ヘルシー 本物のワクチンで副反応が増えてしまうことは仕方ないことなのですね…
重篤な有害事象に関しては、BNT162b2接種群とプラセボ接種群でほぼ変わらないですね。
No deaths were considered by the investigators to be related to the vaccine or placebo. No Covid-19–associated deaths were observed.
引用:
Fernando P. Polack, M.D., Stephen J. Thomas, M.D., Nicholas Kitchin, M.D., Judith Absalon, M.D., Alejandra Gurtman, M.D., Stephen Lockhart, D.M., John L. Perez, M.D., Gonzalo Pérez Marc, M.D., Edson D. Moreira, M.D., Cristiano Zerbini, M.D., Ruth Bailey, B.Sc., Kena A. Swanson, Ph.D., et al., for the C4591001 Clinical Trial Group*. Safety and Efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine. N Engl J Med. 2020 Dec 10;NEJMoa2034577 「ワクチン接種やプラセボ接種に関連した死亡は発生しなかったと考えられました。COVID-19に関連した死亡は観察されませんでした。」
この死亡の報告は、あくまで観察期間中に発生したものをカウントしたもので、ワクチン接種と因果関係のあるものではありません。
観察期間中に6名の方が亡くなっていますが、その死因は、BNT162b2接種群に2名のうち1名が動脈硬化症、1名が心停止であったとのことです。プラセボ接種群の4名では、2名が不明、1名が脳出血、1名が心筋梗塞であったとのことです。
アドホック 総じて、重篤な有害事象の発現率は低く、ワクチン群とプラセボ群の安全性は同程度であったという結論になります!
ウイルスベクターワクチン 既に承認されたmRNAウイルスに加えて、ウイルスベクターワクチンにも注目しています。
ベクター(vector)とは媒介者という意味です。
既に存在するウイルスを媒介者として、免疫を獲得するための抗原タンパク質を、ワクチン接種者の細胞内に届ける手法です。
ベクターとなるウイルスは、ヒトに対して病原性がない、もしくは 弱毒性ものを用います。ウイルスベクターに抗原たんぱく質の遺伝子を組み込むんだ組み換えウイルスがワクチンに含有されています。ワクチンとして投与されたウイルスは、それ自体が細胞に侵入し、細胞質で抗原たんぱく質をつくり出すことで、免疫を獲得します。
オックスフォード大学とアストラゼネカ社連合、ジョンソンアンドジョンソン社などが開発しており、各社で運び屋のウイルスベクターの型が異なります。
mRNAウイルス同様に期待されているワクチンですが、執筆時点では承認まで至っておりません。
おわりに ヘルシー 治療薬やワクチンについて理解できました。ウイルス克服に向けて着実に進展しているようで、少し不安が和らぎました!
治療薬やワクチンについては、これからも続々と治験結果が報告される見込みで、それによって評価が変更になることもあります。
可能な範囲で情報をアップデートしていきましょう!
なおこれまでに実用化されたmRNAワクチンはありませんでした。新型コロナウイルス感染症のワクチンが世界で初めてのmRNAワクチンです。
それだけ日進月歩で研究は進んでいることに驚きを隠せません。
今後もポジティブなニュースに期待しましょう!
アドホック 最後までお読みいただき、ありがとうございました!!