【感染症スクリーニング】HBV、HCV、HIV、梅毒、ピロリ菌の検査結果の解釈

アドホック
こんにちは!今回は「感染症のスクリーニング」についてまとめます。
ヘルシー
人間ドックや術前スクリーニングで測定される感染症についての解説です。
検査項目の解釈が難しいものが多いので、ぜひこの記事を参考にしてください!

肝炎ウイルス

主にB型肝炎とC型肝炎が検査対象となります。

B型肝炎

スクリーニング検査では「HBs抗原」と「HBs抗体」の2項目が測定されます。

HBs抗原が陽性であれば、体内にB型肝炎ウイルスが存在することになります。

そこで、今後の方針を決定するために、専門医の受診が必要になります。

なお「HBs抗原陽性=治療適応」という訳ではありません。

肝機能障害がなく、ウイルスの感染性(活動性)を示すHBe抗原が陰性で、さらにHBV-DNA(ウイルス量)が少なければ、経過観察となることもあります。このような治療方針の決定のためにも、追加検査が必要となります。 

ヘルシー
「無症候性キャリア」と呼ばれる方がいます。母子感染などでB型肝炎ウイルスに感染し、検査をするとHBs抗原陽性となる方ですが、多くは経過観察となっています。上記のように追加検査で、活動性やウイルス量が低いことが確認されているためです。

HBs抗体陽性は次の2パターンです。
①過去に感染したことがある
②ワクチン接種を受け抗体が体内に存在している

HBs抗体は防御抗体とも呼ばれ、新規のB型肝炎の発症を予防してくれる効果があります。

ヘルシー
医療従事者は医療事故などの感染リスクがあることから、B型肝炎ワクチンを接種しています。スクリーニング検査を受けると、「HBs抗原陰性+HBs抗体陽性」という検査結果になりますね。
アドホック
ちなみに私の場合、B型肝炎ワクチンを打ってもなかなか抗体が定着せず、3回ワクチンを打って、やっとHBs抗体陽性が確認できました。ワクチンを接種すれば必ず抗体を獲得できるという訳ではない、と学ばされました。

C型肝炎

スクリーニング検査では「HCV抗体」が測定されます。

初回のHCV抗体陽性の指摘の場合、専門医の受診が必要になります。

過去にC型肝炎に感染し現在はウイルスが体内から排除された場合にも、HCV抗体は陽性となります。

ウイルスが体内にいるかどうかは「HCV-RNA定量検査」を行うことで評価ができます。

アドホック
残念ながら、まだC型肝炎のワクチンはありません。
肝炎について下記の記事にまとめていますので、宜しければご参照ください。
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HBs抗原陽性やHCV抗体陽性の場合、原則として医療機関での精査が必須です。

HIV

「HIV」は「Human Immunodeficiency virus」の略称です。

HIV に感染し、無治療のまま経過し細胞性免疫不全となり、日和見感染や悪性腫瘍を引き起こす状態を後天性免疫不全症候群=AIDS(Acquired ImmnoDeficiency Syndrome)と呼びます。

ヘルシー
HIV感染=AIDS発症ではありません!
スクリーニング検査には「HIV抗体」の測定が行われます。

脚注のように、検査には偽陽性・偽陰性があります。

HIV抗体陽性=HIV感染ではありませんし、反対にHIV抗体陰性でも安心できない場合があります。

まず偽陽性というのは、「実際はHIVに感染していないのに、HIV抗体が陽性なる」ことです。妊娠や自己免疫疾患に罹患している場合などに、偽陽性となる場合があります。

次に偽陰性ですが、「本当はHIVに感染しているのに、HIV抗体が陰性となってしまう」ことです。

一般にHIV抗体が陽性かするまでに、感染後6-12週を要するとされています。つまり感染してすぐに検査をしても、HIV抗体は陰性となってしまうのです。

ヘルシー
この偽陰性の期間をウインドウ期(window period)と呼びます。
確定診断には「Western Blot法による抗体確認検査」と「HIV遺伝子検査」を行います。
HIV抗体が陽性の場合や、感染リスクが極めて高い場合には、上記検査等の精査のため、専門医を受診しましょう。
HIV抗体陽性は医療機関での精査が必須です。感染早期の偽陰性に注意が必要です。

梅毒

梅毒はトレポネーマ(Treponema pallidum)の感染により発症します。

性感染症の代表疾患です。経胎盤感染による先天性梅毒もあります。

感染から数年経過すると、大動脈炎や大動脈瘤、進行麻痺、難聴、視力障害などの重篤な症状を認めるようになり、早期の治療が必要です。

スクリーニング検査には「梅毒血清反応STS」と「特異的TP抗原法」を用います。

結果の解釈は下記の通りです。

ヘルシー
複雑ですが、まずは下の説明を読んでみてください。
梅毒に感染すると、最初にカルジオリピンに対する抗体が上昇します。カルジオリピンとは、トレポネーマに感染することで体内で放出される脂質抗原のことで、「間接的に梅毒の存在」を示すものです。これを検出するのがSTSです。梅毒罹患後4-6週間後からSTS法が陽性となります。また抗カルジオリピン抗体は治療に反応して低下するため、治療効果の判定にも利用されます。検査方法にVDRL法やRPR法などがあります。
梅毒感染により最初に抗カルジオリピン抗体が上昇し、その後、トレポネーマを抗原とする抗体(抗トレポネーマ抗体:TP抗体)が上昇します。抗カルジオリピン抗体と違い、「病原体を直接抗原として産生される抗体」のため、梅毒の感染の正確性が高いです(特異度が高いです)。
ヘルシー
どうでしょうか?少し理解しやすくなったのではないでしょうか?
アドホック
検査の結果のパターン別に、順番に解説していきます!
まずSTSとTPHAが両方陰性の場合、梅毒感染がないもしくはSTSで抗カルジオリピン抗体が検出される前の早期(感染4-6週間後)のいずれかです。感染が疑われる場合には、数週間おいて検査します。
次にSTS陽性でTPHAの場合、感染初期が考えられます。TP抗体は抗カルジオリピン抗体に遅れて産生されます。
アドホック
カルジオリピンはトレポネーマ感染により体内に産生される脂質抗原で、トレポネーマの存在証明としてはあくまで間接的な検査です。そのため偽陽性もあります。例えばSLEなどの膠原病や妊娠、感染症(EBウイルス、マイコプラズマ)でもSTS法で陽性になることがあります。
STSとTPHAが両方陽性の場合には、梅毒感染と診断されます。
最後にSTS陰性でTPHA陽性の場合、これは過去に梅毒に罹患したことを示します。また抗カルジオリピン抗体は治療により抗体価が下がるので、感染力の低下した潜伏感染状態を反映している可能性もあります。
ヘルシー
一度でも梅毒に感染すると、TP抗体はずっと陽性のままです!
STSとTPの両方陽性で梅毒の診断です。ただ梅毒感染が疑われるエピソードがある場合には、一度の検査結果で判断せず、経時的に検査結果を確認する必要があります!

ピロリ菌

胃の粘膜に生息しているらせん状をした細菌です。一度感染すると、除菌をしない限り、胃の中に生息し続けます。

胃炎や胃潰瘍、胃癌のリスクと考えられています。

アドホック
「慢性胃炎→胃粘膜の萎縮→胃癌」という経過を辿ることを知っておきましょう!
ヘルシー
慢性炎症は怖いです…

引用:Tomoari Kamada, Ken Haruma, Masanori Ito, Kazuhiko Inoue, Noriaki Manabe, Hiroshi Matsumoto, Hiroaki Kusunoki, Jiro Hata, Masaharu Yoshihara, Koji Sumii, Takashi Akiyama, Shinji Tanaka, Akiko Shiotani, and David Y. Graham. Time Trends in Helicobacter pylori Infection and Atrophic Gastritis Over 40 Years in Japan. Helicobacter. 2015;20:192–198.

日本人のピロリ菌の感染率を示しています。

乳幼児期の環境がピロリ菌の感染と関係しています。上下水道の整備など衛生環境の改善や、親と乳幼児で食べ物を共有しないなどの育児に関する知見の集積もあり、ピロリ菌への感染率は低下しています。

スクリーニング検査として、下記の方法があります。

ヘルシー
血液検査でスクリーニングできるのはお手軽ですね!

また検診で内視鏡検査を受けるときにピロリ菌のスクリーニングを行うことも多く、その場合には下記の方法でピロリ菌感染の有無を調べます。

さらにピロリ菌のスクリーニングと同時に、胃がんのリスクを評価する目的で、

「血清ペプシノゲン検査」を行うことがあります。

ペプシノゲンとは胃のタンパク分解酵素ペプシンの前駆体です。ペプシノゲンは「胃粘膜の萎縮」の指標とされています。慢性炎症が胃粘膜萎縮の原因となり、発癌の原因となります。

ペプシノゲンは血液検査で測定しますが、同時にピロリ菌抗体も測定知ることで、胃癌リスクを評価することが出来ます。

A群はペプシノゲンもピロリ菌抗体も陰性の場合で、健常な胃粘膜と考えられます。

B群はピロリ菌抗体のみ陽性の場合で、胃粘膜の萎縮はまだ軽度と考えられます。

C群はペプシノゲンもピロリ菌抗体も陽性の場合で、ペプシノゲン陽性が萎縮した胃粘膜の存在を示唆します。

D群はペプシノゲンのみ陽性の場合です。これは萎縮が高度となったことで、ピロリ菌も生息することができない深刻な状況と考えられます。

ヘルシー
ABC検診と呼ばれていますよね!
アドホック
ABC検診はあくまで「リスク検診」で、直接胃粘膜の様子を観察したものとではありません。ペプシノゲンもしくはピロリ菌抗体が陽性であった場合には、内視鏡検査を受けることが推奨です!
ピロリ菌は除菌可能です。スクリーニングで陽性となったら、引き続き治療を検討しましょう!

おわりに

アドホック
「感染症スクリーニング」についてご説明しました
ヘルシー
病気の発症予防や進行する前に介入するためにも、スクリーニング検査は有用ですね!
アドホック
ただ検査結果が正しく解釈されないと、その後の精査にまで足を運んでもらえないこともありますね…
レイジー
スクリーニングで検査異常になったけど、特に症状もなし、検査結果もよく分からないし…このまま放置でいいか!
アドホック
このように放置しないよう、検診などを受けたら検査の目的や結果の解釈について、理解するように心がけましょう!
・スクリーニング検査は、病気の可能性があるかどうかの「ふるいわけ」に過ぎません。確定診断や治療適応の評価には、追加の精査が必要です!
アドホック

最後までご覧いただきありがとうございました!

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