【肝機能障害・肝疾患の診療】外来診療の備忘録

アドホック
こんにちは!今回は「肝機能障害」についてまとめます。
ヘルシー
肝機能障害は検診で指摘される方は多いですよね!
肝機能障害を指摘されたことがある方は、ぜひご自身の異常値のパターンを把握してみましょう!
その原因が想起が浮き彫りになるかもしれません!

検査値の基準値と異常の分類

肝機能の代表的な検査項目として、AST、ALT、γ-GTPが挙げられます。

肝臓は肝小葉と呼ばれる小さな構造の集合体で、小葉の中心に中心静脈が流れ、小葉の間は門脈域と呼ばれ肝動脈や門脈、胆管がセットになって存在しています。

肝小葉の場所により、ASTとALTの局在が異なります。

基準値は検査施設や測定方法などで変動しますが、おおよそ下記の通りになります。

また各検査項目の上昇程度によって、重症度が分類されます。

こちらも施設ごとに異なりますが、下記が目安となります。

パターンによる原因疾患の鑑別

軽度・中等度のAST・ALTの上昇

ASTとALTが上昇する場合は、「肝細胞障害型」として考えます。

どちらが有意に上昇しているかで、下記の鑑別疾患を考えます。

①AST<ALTの場合

「脂肪肝」や「ウイルス性慢性肝炎」が代表的な疾患です。

アドホック
ALTの単独上昇 を精査し、脂肪肝と診断されるケースに頻繁に遭遇します。

②AST>ALTの場合

「アルコール性肝障害」や「肝硬変」、「肝内占拠性病変(腫瘍、膿瘍など)」を考えます。

ヘルシー
酒(SAKE)の「S」でAST有意に上昇、国家試験の覚えました。

軽度・中等度のγ-GTPの上昇

ALPの上昇の有無によって、さらに細分化されます。

①ALP上昇を伴う場合

肝内胆汁うっ滞を認める「原発性胆汁性胆管炎」が挙げられます。

また肝外胆汁うっ滞を認める疾患として、「総胆管結石」や「膵頭部癌」が挙げられます。総ビリルビンの上昇を認めることもあります。

②ALPが正常の場合

「アルコール性肝障害」、「脂肪肝」などが挙げられます。

ヘルシー
お酒好きな人が、会社の健診で「γ-GTPの単独上昇」を指摘されている光景を、よく目にします!「前日に飲み過ぎた!」と自覚のある方が多いですよね。
アドホック
断酒をしてγ-GTPが正常化するようでしたら、節酒を心がけるよう指導させていただいています。
ただγ-GTP上昇を認めた場合、その方に飲酒習慣がない場合や、その他の肝機能検査に異常がある場合には、超音波などの画像検査を受ける機会を作ることを推奨しています。
ヘルシー
ちなみにγ-GTPの半減期は7-10日とされています!
コラム:「健診」と「検診」
「健診」は健康診断の略で、健康かどうかを調べることで、病気のリスクを早期に見つけることが目的です。病気の発症を予防することが目的ですので、一次予防になります。
「検診」は歯科検診やがん検診のように、特定の臓器の異常を見つけ、早期治療に結びつける目的に行われます。治療を念頭に置いていることから、健診よりも高次の予防と考えられます。

高度のAST・ALT・γ-GTPの上昇

「急性肝炎」が疑われます。早急に精査・加療が必要です。

特に劇症肝炎は重症疾患です。肝性昏睡と凝固能低下が診断基準です。

代表的な肝疾患

脂肪肝

肝小葉の30%以上の肝細胞に脂肪滴が貯留した状態です。過栄養や肥満の増加を背景に、成人男性の30%、成人女性の10%の頻度で認められる疾患です。

アルコール、肥満、糖質の過剰摂取が主な原因ですが、内分泌疾患(甲状腺機能亢進症、クッシング症候群)や妊娠、薬剤(ステロイド等)が成因となることもあります。

治療はカロリー制限や脂肪・糖質の制限、運動などの生活習慣の改善が必要です。可逆的な病態ですので、ご本人の努力が大切です。

また脂肪肝を罹患する人には、動脈硬化や糖尿病の合併が多く、それらによる心血管疾患の発症が予後を左右します。

アルコール性肝障害

「アルコール性脂肪肝」「アルコール性肝炎」「アルコール性肝硬変」「アルコール性肝線維症」を総称してアルコール性肝障害です。

アルコール代謝時の酸化ストレスによる「肝細胞障害」と、アルコールやアセトアルデヒドがサイトカインを誘導し最終的にコラーゲン増生を促進することによる「肝繊維化」が主な病態です。

アルコール常飲がアルコール性脂肪肝を引き起こします。脂肪肝が遷延・悪化すると、肝炎や肝線維症を経て、肝硬変を発症してしまいます。脂肪肝や肝炎は治癒可能ですが、肝線維症や肝硬変は不可逆的な病態です。

アルコール性脂肪肝やアルコール性肝炎の段階で、禁酒により、治癒させることが最重要です。

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)

「NAFLD」は「non-alcoholic fatty liver disease」の略称です。

飲酒歴がない人にアルコール性肝障害に類似した脂肪性肝障害を認める場合に診断されます。単純に脂肪が沈着している場合に加え、脂肪化に加え炎症や線維化を伴う肝炎に進展するものもあります。

メタボリックシンドロームの合併率は40%です。

脂質異常症や高血圧、糖尿病の合併も多く、潜在的にインスリン抵抗性が存在するともされています。

非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)

「NASH」は「non-alcoholic steatohepatitis」の略称です。

NAFLDの病型の一つで、脂肪沈着に加え、壊死性炎症を伴う、慢性炎症性進行性肝疾患です。

ASTやALTの上昇を認めます。

減量のための食生活の改善や運動不足の解消などの生活習慣の是正、合併する高血圧や脂質異常症、糖尿病への加療を行います。

放置しておくと、肝硬変へ進展しまうことあります。

アドホック
「お酒を飲まなければ肝臓は大丈夫」と考えている方もいらっしゃいますが、肥満や生活習慣病が原因で肝疾患を発症することもしっかり覚えておきましょう!

ウイルス性肝炎

治療を要する肝疾患の90%が肝炎ウイルスを原因としています。

A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、E型肝炎があり、血液検査により抗原や抗体を調べることにより、診断可能です。なおD型肝炎とE型肝炎は極めて稀です。

B型肝炎とC型肝炎は慢性肝炎や肝硬変、肝細胞癌へ移行するリスクがあり、特にC型肝炎は癌化のリスクが高いことが知られています。

B型肝炎

B型肝炎ウイルス(HBV)の初感染により肝炎を発症します。感染経路は、性行為、針刺しなどの医療事故、輸血などです。

劇症化に到る確率は1-2%とされています。

3歳未満での免疫機能が未発達時に感染した場合には、慢性化率が高くなります。また3歳以上でも、免疫抑制薬やステロイド投与時などには慢性化する可能性があります。

HBVの検査には、下記のマーカーが測定されます。

・HBs抗原:感染状態
・HBs抗体:既往感染(防御抗体)
・HBe抗原:肝炎の活動生(感染力)
・HBe抗体:回復期
・IgM型HBc抗体:発症早期
・IgG型HBc抗体:発症後期〜既往感染
・HBV-DNA:血中ウイルス量
アドホック
まずはHBs抗原を測定し、感染の有無を確認します。次にHBe抗原とHBe抗体を測定することで、活動性を評価します。例えばHBe抗原陽性+HBe抗体陰性では、ウイルスの増殖力や肝炎の活動生が高い状態で他の人への感染力が高い状態を意味します。反対にHBe抗原陰性+HBe抗体陽性では、肝炎は鎮静化しており、感染力は低い状態です。
治療は拡散アナログ(エンテカビル、ラミブジン、アデホビル)やインターフェロン療法が行われます。
治療の目的は、肝炎の鎮静化です。具体的にはHBV-DNAが検出感度以下になること、ALTが正常化すること、HBe抗原陽性からHBe抗体陽性に変化することです。
アドホック
HBe抗原陰性化+HBe抗体陽性はseroconversionと呼ばれます。ウイルス量が低下し、感染力が低下することを示しています!
ヘルシー
拡散アナログやインターフェロン療法の適応は、年齢・HBe抗原の有無・HBV-DNA量によって決定されます。
HBVの防御抗体であるHBs抗体は、ワクチン接種により獲得可能です。
感染リスクの高い医療従事者や消防士、救急救命士、警察官などは以前からワクチン接種していましたが、現在では小児期の定期接種に追加されています!
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C型肝炎

主な感染経路は、輸血・刺青・針刺し事故です。B型肝炎と比べて、性行為感染や母子感染は起こしにくいとされています。また輸血後肝炎の発生もほとんどありません。

容易に遷延化・慢性化します。多くの場合、軽度の肝炎が長期間持続し、数十年後に肝硬変、最後には肝癌に進展します。

診断のスクリーニングとして、HCV抗体が検査されます。HCV抗体陰性であれば、HCVの現在の感染は否定されます。

HCV抗体陽性の場合、現在HCVに感染している場合と、過去にHCVに感染したことを反映する場合があります。HCV抗体の力価でも評価はできますが、さらにHCV-RNAを測定することで、診断精度が高まります。

アドホック
HCV-RNAはHCVウイルスの遺伝子を直接調べる検査です。HCV抗体は感染後に体内で生成されるタンパク質を検出する検査です。過去の感染時に生成された抗体も検出されることがあります。
治療は、以前はリバビリンやインターフェロン療法を中心に行われていましたが、現在ではインターフェロンフリーの治療が標準です。直接作用型抗ウイルス薬(DAA: Direct Acting Antiviral)の登場により可能になりました。
治療の目的は、HCV-RNAの陰性化とALTの正常化です。
アドホック
AST<ALTパターンでウイルス性肝炎を疑うと紹介しました。正確には肝炎の急性期にはAST>ALTとなり、慢性期にAST<ALTとなります。慢性肝炎に移行すると、ALTを多く含んだ門脈域の肝細胞が壊死することを反映しています。

肝硬変

あらゆる肝疾患の終末像です。

病因の一番は肝炎ウイルス性(HCV>HBV)です。続いてアルコール性、胆汁うっ滞性、自己免疫性、代謝性、鬱血性、薬剤性となりますが、ウイルスとアルコールで90%以上の原因を占めています。

肝硬変は不可逆的な病態であるため、肝移植を除いて、根本的な治療がありません。

残された肝機能を温存するために食事療法(カロリーとタンパク質摂取量のコントロール)や肝庇護薬の使用されます。

合併症に対しては対象療法が必要であり、浮腫や腹水には利尿剤やシャント作成術、食道静脈瘤に対して内視鏡による加療などが行われます。

ヘルシー
肝硬変の方が腹水で苦しそうに呼吸する様子を外来で目にします。本当にお辛そうです。
肝硬変の三大死因
・肝癌
・消化管出血
・肝不全
アドホック
肝硬変になる前に、予防及び治療可能な原疾患に対する介入が最重要です!

薬物性肝障害

薬物による直接的もしくは間接的な肝障害です。

発症機序により、中毒性、アレルギー性、異常代謝性に分類されます。

中毒性は薬物の容量依存性に発症しますが、アレルギー性や代謝依存性では服用量に依存しません。

ヘルシー
アレルギー性では服用後4週間以内に肝機能障害が出現しますが、代謝依存性では数ヶ月後に肝機能障害が出現することがあります。

また肝機能異常のパターンにより、肝細胞障害型(AST・ALT・LDHの上昇)、胆汁うっ滞型(γ-GTP・ALPの上昇)、混合型に大別されます。

診断基準として、下記が有用です。

薬物性肝障害を疑う場合には、ALTとALPが正常上限値の2倍以上かどうかに注目します。

また薬物性肝障害の多くがアレルギー性とされており、発熱や発疹、皮膚瘙痒感などの症状や、好酸球優位の白血球上昇がないかも、診断をする上で参考になる所見です。

最終的な診断は、ウイルス性肝炎など他の原因よる肝障害の除外した上で、起因薬物の同定することです。多くの場合、起因薬剤の中止で、肝機能は服用前の水準に戻ります。

ヘルシー
薬を飲む前から肝機能障害を起こすかどうか分かると、新規のお薬も安心して始められるのですが、そのあたりはどうなんでしょうか?
アドホック
肝機能障害を起こしやすい薬剤というのは存在します。例えば鎮痛薬のアセトアミノフェンは、安全域が狭く、過量内服から薬物性肝障害を起こすことがあります。ただ全ての薬剤やサプリメントで薬物性肝障害を起こしうると考えておくべきです。
ヘルシー
全ての薬剤、そしてサプリメントもですか!!
アドホック
また薬物性肝障害の多くが、アレルギー性や代謝依存性とされています。つまり、服用前に薬物性肝障害を起こすかどうかの予測が困難ということです。
ヘルシー
「アセトアミノフェンを用法・容量を確認せずに、大量に飲んでしまいました!」というように、明らかな過量摂取による薬物性肝障害の頻度は少ないということですね。
アドホック
肝機能障害の原因がなかなか特定できない場合、薬やサプリメントの服用情報の再確認がブレイクスルーになることがあります!他院での処方薬やご自身で購入しているサプリメントなどの情報を、主治医としっかり共有することを推奨します!
ヘルシー
お薬手帳が役立ちそうですね!

おわりに

アドホック
「肝機能障害」の診療を行う上で、最低限注意すべき点をまとめてみました
ヘルシー
健康診断などで指摘されたことがある人が多いと思いますが、検査値の異常パターンで原因が推定できることがあるのですね!
アドホック
血液検査で異常を指摘されても、肝疾患は自覚症状がないものが多いので、放置されてしまうケースによく遭遇します。
レイジー
全くお酒を飲まないのに、毎年γ-GTPが高いって言われるよ…
でも何ともないし…放置でいいか!
アドホック
原因のはっきりしない肝機能障害は、しっかり精査する機会を作りましょう!予期せぬ疾患が隠れているかもしれません。
・肝臓は沈黙の臓器。肝臓の小さな叫びに積極的に耳を傾けてあげましょう!
アドホック

最後までご覧いただきありがとうございました!

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