


今日はブログを運営する上で重要な「著作権」について考えてみようと思います。
ブログを執筆する上で、全てが自分のオリジナルコンテンツである方はこの記事は不要かもしれません。
ただ自分の意見や考えを主張にする時に、より説得力を持たせたいものです。
そのために「先人たちの叡智に触れる」ことは非常に有用ですが、
その際に注意すべきは「著作権」の取り扱いです。
著作者の権利
著作権法により、著作物を創作した者である著作者に与えられている権利です。著作者の権利には、人格的利益 (精神的に「傷つけられない」こと)を保護するための「著作者人格権」と、財産的利益 (経済的に「損をしない」こと) を保護する「著作権(財産権)」の二つがあります。
新しく何かを作ることは多大な労力が必要です。
その努力によってようやく完成したものですから、「著者者の権利」が保証されるのは当然のことですよね。
そして著作権の侵害は決して許されません!
でも著作権を侵害しない上で、その努力の結晶をみんなに共有したいことはありますよね?
やはり著作権を優先して諦めるしかないのでしょうか。
何か方法はあるのでしょうか?
この記事では丁寧に言葉の定義を確認しながら、一緒に勉強していこうと思います!
著作権について、言葉の定義を確認しながら一緒に勉強していきましょう。ここでは著作物を自由に使う方法として「引用」をご紹介します。正しく「引用」を行うための「条件」をご紹介しますので、ブログなどを書きたいと考えている方はぜひ確認しておきましょう!さらに論文を紹介する時に注意を要する「要約」について、可能な限り調べましたので、私のように著作物の紹介を考えている方は必見です!
まず結論!著作物を使用する時は「引用」できないかを検討する!
まずは「著作物」という言葉について確認です。
著作物
「著作者の権利」によって「保護」される対象が著作物です。著作物は、著作権法では、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定義されています(第2条第1項第1号)。
難しい表現ですね。
より具体的に著作物について提示されていましたので、下記をご参照ください。
著作物の例示
著作権法では、次に掲げられているように、著作物の種類を例示しています(第10条)。
○言語の著作物 講演、論文、レポート、作文、小説、脚本、詩歌、俳句など
○音楽の著作物 楽曲、楽曲を伴う歌詞
○舞踊、無言劇の著作物 日本舞踊、バレエ、ダンス、舞踏、パントマイムの振り付け
○美術の著作物 絵画、版画、彫刻、マンガ、書、舞台装置など(美術工芸品を含む)
○建築の著作物 芸術的な建築物
○地図、図形の著作物 地図、学術的な図面、図表、設計図、立体模型、地球儀など
○映画の著作物 劇場用映画、アニメ、ビデオ、ゲームソフトの映像部分などの「録画されている動く影像」
○写真の著作物 写真、グラビアなど
○プログラムの著作物 コンピュータ・プログラムなお、「映画の著作物」を除き、著作物とされるためには、「固定」(録音、録画、印刷など)されている必要はありませんので、「原稿なしの講演」や「即興の歌」なども保護の対象となります。

本ブログでは「医学論文」を積極的に紹介していきたいのですが、この「論文」に関しても「言語の著作物」であり、著作者の権利が保護されている対象になりますね。
論文の執筆から出版までの工程は、想像的な活動かつ多大な苦労を要する作業ですので、
著作者の権利が保証されることに、全く異論はありません。

私も論文執筆には毎回苦労させられています。


著作物を自由に使える場合著作権法では,一定の「例外的」な場合に著作権等を制限して,著作権者等に許諾を得ることなく利用できることを定めています(第30条〜第47条の8)。
これは,著作物等を利用するときは,いかなる場合であっても,著作物等を利用しようとするたびごとに,著作権者等の許諾を受け,必要であれば使用料を支払わなければならないとすると,文化的所産である著作物等の公正で円滑な利用が妨げられ,かえって文化の発展に寄与することを目的とする著作権制度の趣旨に反することにもなりかねないためです。
しかし,著作権者等の利益を不当に害さないように,また,著作物等の通常の利用が妨げられることのないよう,その条件は厳密に定められています。
また,著作権が制限される場合でも,著作者人格権は制限されないことに注意を要します(第50条)。
なお,これらの規定に基づき複製されたものを目的外に使うことは禁止されています(第49条)。また,利用に当たっては,原則として出所の明示をする必要があることに注意を要します(第48条)。
特にブログのような用途で著作物を使用する場合には、「引用」を用いることが現実的でしょう!
引用(第32条)
[1]公正な慣行に合致すること,引用の目的上,正当な範囲内で行われることを条件とし,自分の著作物に他人の著作物を引用して利用することができる。同様の目的であれば,翻訳もできる。(注5)[2]国等が行政のPRのために発行した資料等は,説明の材料として新聞,雑誌等に転載することができる。ただし,転載を禁ずる旨の表示がされている場合はこの例外規定は適用されない。
しっかり条件を満たせば「引用」という方法で、著作物を紹介することができるということが分かります。
ただ「公正な慣行」とは難しい表現に感じます。
この用語に関しては、文化庁のホームページにQ&Aとして回答されています。
Q. 引用が認められる条件として、著作権法では「公正な慣行に合致」することと、「引用の目的上正当な範囲内」で行われることとの2つが挙げられていますが、「公正な慣行」や「正当な範囲」とは、具体的にはどのようなものですか。
A. 「引用」とは、例えば自説を補強するために自分の論文の中に他人の文章を掲載しそれを解説する場合のことをいいますが、法律に定められた要件を満たしていれば著作権者の了解なしに利用することができます(第32条)。
この法律の要件の中に、「公正な慣行に合致」や「引用の目的上正当な範囲内」のような要件があるのですが、最高裁判決(写真パロディ事件第1次上告審 昭和55.3.28)を含む多数の判例によって、広く受け入れられている実務的な判断基準が示されています。例えば、[1]主従関係:引用する側とされる側の双方は、質的量的に主従の関係であること [2]明瞭区分性:両者が明確に区分されていること [3]必然性:なぜ、それを引用しなければならないのかの必然性が該当します。
つまり上記のような判断基準を満たせば「引用」が認められるということです。
少し長くなりましたので、一度まとめておきましょう!
「引用」かどうかの判断基準

「引用」の範囲内であれば、著作物を自由に使えることまで確認できました。
ではその「引用」に該当するかどうか、どのように判断すればよいのでしょうか?
「引用」として認められるかどうかの実務的な判断については、
以下の4つの基準を満たすこととされています。
(注5)引用における注意事項
他人の著作物を自分の著作物の中に取り込む場合,すなわち引用を行う場合,一般的には,以下の事項に注意しなければなりません。
(1)他人の著作物を引用する必然性があること。
(2)かぎ括弧をつけるなど,自分の著作物と引用部分とが区別されていること。
(3)自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること(自分の著作物が主体)。
(4)出所の明示がなされていること。(第48条)
(参照:最判昭和55年3月28日 「パロディー事件」)
まず「必然性」についてです。
私の場合は医学論文の引用を考えています。
私の伝えたいことの根拠として論文を紹介することは、自説の補強のための使用ですので、必然性があると考えられます。
次に「明瞭区分性」についてです。
この記事でも実践している通り、引用部分に「”(ダブルコーテーション)」をつけ、さらに引用部分は本文と背景色を変更することで、区分を明確しています。
「主従関係」についてです。
引用として論文を紹介をする上で、最も重要な点と考えます!
あくまで自分が伝えたいことが最初にあった上で、論文はそれを補強する目的で引用される必要があります。
つまり紹介したい論文について、どんなに時間をかけて一生懸命に詳細を記事にまとめたとしても、その紹介だけで記事が完結してしまっては、肝心の主従関係がはっきりしません。
引用した論文の内容が「従」であるためには、最初に自分は何が読者に伝えたいのか、この記事のメッセージは何か、「主」を明確しておかなくてはいけないと思います。
最後に「出所の明示」です。
Q. 引用する場合、出所の明示はどのようにすればいいのでしょうか。
A. 「引用」とは、例えば自説を補強するために自分の論文の中に他人の文章を掲載しそれを解説する場合のことをいいますが、著作権法に定められた要件を満たしていれば著作権者の了解なしに著作物を利用することができます(第32条)。この法律の要件の1つに、引用される著作物の出所の明示(出典を明記すること なおコピー以外の方法(例 講演の際に他人の文章を引用し口述)により引用する場合はその慣行があるとき)を義務付けています(第48条)。その方法は、それぞれのケースに応じて合理的と認められる方法・程度によって行われなければいけないとされていますが、引用部分を明確化するとともに、引用した著作物の題名、著作者名などが読者・視聴者等が容易に分かるようにする必要があると思われます
「著作者、著作物の題名」は最低限必要と考えられます。
本ブログでは医学論文に関しては、「著者名. 表題. 誌名. 発行年;巻数:頁」の通りに記載することとします。
・「引用」として認められるには、「必然性」「明瞭区分性」「主従関係」「出所の明記」の4つの基準を満たす必要がある。
論文の要約は翻案権の侵害!?

しっかり「引用」の条件も満たすことができそうですね!

そうですね!著作権を遵守しつつ、論文も引用できそうです。
ただここまで調べて、最後にどうしても分からないことが出てきたんですよ。
Q. 他人の論文を自分の論文中に引用する場合に、要約して利用することも許されますか。
「引用」の場合には他人の著作物をそのまま改変を加えずに利用するのが原則であって、翻案にあたる要約を行って利用することはできません。
「引用」とは、例えば自説を補強するために自分の論文の中に他人の文章を掲載しそれを解説する場合のことをいいますが、法律に定められた要件を満たしていれば著作権者の了解なしに利用することができます(第32条)。また、要約は、著作物の内容をある程度概括できる程度にした著作物のことをいいますが、この要約を行う行為は、一般に翻案権(第27条)が働く行為とされており、著作権者の了解なしにはできません。ただし、ごく簡単に内容を紹介する程度の文書であれば、著作権者の了解は必要ないと考えられています。なお、翻訳も同種の権利(第27条)ですが、引用の場合は翻訳して引用することは自由にできることになっています(第43条第2号)。
「翻案」という用語が出てきました。
どうやら「引用」は問題ないようなのですが、この「翻案」を行う場合は著作者の了解が必要とのことです。
特に論文の要約を行う場合は、「翻案」に該当すると記載されています。
この「翻案」とはどのような意味なのでしょうか?
翻案権
二次的著作物の創作権(第27条)の一つです。著作物に創作性を加えて別の著作物を作成する権利のことをいい、原作を脚本にしたり(脚色化)、映画にしたり(映画化)、文書を要約したりする場合に働く権利です。
著作物に手を加えて二次的に物を想像した場合には、「二次的著作物の創作権」をもともとの著作者が有しているとの考えで、原作の著作者の了解なしに二次的著作物を創造できないとのことです。
例えば小説を書いた場合、それを映画化する場合には、その作家の了解を得る必要があることは納得できますね。
ただこの「翻案権」の中に、文書の要約と明記されています!
文化庁のQ&Aの欄には、「ごく簡単に内容を紹介する程度の文書であれば著作者の了解は不要だが、著作物の内容をある程度概括できる程度にした著作物の場合には、翻案権が働き、著作者の了解が必要」とされています。


ごめんなさい。残念ながら私にはその境界は分かりませんでした。
さらに、例えば論文の「結果の部分だけ」を条件を満たしつつ引用した場合でも、内容が論文の結論に直結することから、「要約」、つまり「翻案」と解釈されてしまうのか、この点も明確な回答を見つけることができませんでした。


ここは詳しい方に聞いてみましょう!
残念ながら私の力量不足もあり、
この「翻案」の件を含め、最後は文化庁に電話で問い合わせをすることにしました。
その結果を皆さんにも共有させていただきます。
著作権について文化庁に聞いてみた!!
ここまで調べたわかったことをもう一度まとめましょう!
・「引用」として認められるには、「必然性」「明瞭区分性」「主従関係」「出所の明記」の4つの基準を満たす必要がある。

Q. 英語論文を日本語で紹介するブログの開設を検討しています。論文の紹介するに際して、著作権に関する事項について不明な点があり、ご連絡させていただきました。
A. まず著作物を自由に使える条件として、「引用」があります。「引用」かどうかは4つの条件を満たすかどうかで判断されます。その条件とは、他人の著作物を引用する必然性があること、かぎ括弧をつけるなど自分の著作物と引用部分とが区別されていること、自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること、出所の明示がなされていることです。引用の範囲内であれば、論文の紹介は問題ありません。
Q. 無料で閲覧できる論文や有料の論文がありますが、いずれも引用は可能でしょうか?
A. 既に出版されている論文であれば、無料でも有料でも引用することができます。
Q. 論文中の図や表は引用することは可能でしょうか?具体的には、論文中の特定の部分を切り取り、ブログ上に貼り付けることは可能でしょうか?
A. すでに出版されている論文であれば、引用可能です。引用部分は自由選択が可能と考えられていますので、ブログに掲載したい部分だけ選択して引用することは可能です。ただ図表を加工・修正をするような、「改変」はできません。改変のような著作物に創作性を加えることは翻案と呼ばれ、引用から逸脱してしまいます。
Q. 図表中の用語が英語なのですが、それらに日本語訳を追記することは可能でしょうか?
A. 引用した内容の翻訳は認められていますので、英単語に訳語を追記することは可能と考えられます。ただ、例えば特定の単語だけ意図的に目立つ色で訳語を追記した場合、翻訳を逸脱する追記と考えられる可能性があります。
Q. 図表を引用して、その下にブログ本文として解説文を記載する場合、その解説文は主従関係における主と従のどちらに該当するでしょうか?
A. 解説文はご自身で図表を読み取って、ご自身の言葉で文章にまとめたものであれば、「主」に該当すると考えられます。必然性があり、かつ主従関係がしっかり守られていることは必要です。
Q. 引用の範囲なら論文を紹介できることは十分に理解できました。最後に論文のデータを説明する際に、その論文の結論を記載することになりますが、それが論文の要約に該当してしまうことはないでしょうか?引用した部分の翻訳は認められることは分かったのですが、論文の結論を翻訳した場合に、それが翻案にならないかを教えて下さい。
A. 英文を引用した場合、翻訳することは認められています。引用した文章や図表が論文の結論の部分に相当する場合でも、先ほど申し上げた4つの条件を満たせば、引用の範囲内と考えられます。要約に該当するかどうかは、最終的には個別の判断になりますが、引用の条件を守り、翻訳であることを大きく逸脱しない限り、翻案には該当しないと考えられます。一般に翻案とは、この場合には引用した文章に追記したり、意図的に省略したりすることが該当します。また翻訳は認められていますが、間違って訳してしまうと、引用した内容から逸脱すことになり、翻案に該当する可能性がありますので、注意が必要です。
*会話内容を再現していますが、一字一句全てが発言内容と一致しているわけではありません。回答内容の大意は変えないよう十分に注意して記載しておりますが、あくまで概要であることをご理解ください。
*電話でご質問した内容について、ブログで公開させていただくことを、口頭で了承していたただきました。

丁寧にご答えいただいた文化庁の方、本当にありがとうございました!!
論文を紹介する際に、「引用の条件をしっかり守り、その部分の翻訳に徹していれば基本的に問題にはならない」ことでした。加えて、引用したものを「改変してはいけない」ことも注意喚起していただきました。
また今回のブログように、本文の一部を引用して紹介するのであれば、それが論文の結論に該当する部分であったとしても、翻案とまでは考えにくいとのご意見をいただきました。
著作物の要約による引用の裁判例
最後に私の疑問が争点となった裁判例がありましたのでご紹介します。
■「血液型と性格」事件(東京地判平成10年10月30日)
この事件では、被告の書籍「小さな悪魔の背中の窪みー血液型・病気・恋愛の真実―」(全212頁)において、原告の著書である「『血液型と性格』の社会史」の一部を要約し、約12頁にわたって掲載したことが、原告の著作権侵害にあたるかが問題となりました。東京地裁は、以下のように述べ、引用の抗弁を認め、侵害を否定する判断を下しました。
「要約による引用は、翻訳による引用よりも、一面では原著作物に近いのであり、これが広く一般に行われており、実際上要約による引用を認める方が妥当であることは前記のとおりであり、他人の言語の著作物をその趣旨に忠実に要約して同種の表現形式である言語の著作物に引用するような場合については、そもそも同法43条2号の立法趣旨が念頭に置いている事例とは利用の必要性、著作者の権利侵害の程度を異にするものであり、同条2号には、翻訳の一態様である要約によって利用する場合を含むものと解するのが相当である。」
この判例を見る限り、要約による引用は認められたということですね。
用語や法令の解釈というのがいかに難しいか、非常に勉強させられました。
また「判例法」という言葉を耳にすることがありますが、
日本では過去の判例を、法律の一つの解釈として用いられるとのことであり、
この場でご紹介させていただきました。
まとめ
お疲れ様でした。
私も専門外の領域で、理解に時間がかかりましたが、結果として以下のようにまとめられます。
・著作物は著作権で保護されており、その権利を侵害してはならない。ただ著作物を自由に使える条件があり、その一つの条件として「引用」がある。
・「引用」として認められるには、「必然性」「明瞭区分性」「主従関係」「出所の明記」の4つの基準を満たす必要がある。
・さらに引用した著作物を「改変」をしてはいけない。
・引用した著作物の「翻訳」は可能である。
・論文の結論の部分を紹介することは、言葉の定義では「翻案」とも解釈できる可能性はあるが、引用のルールを徹していれば問題となる可能性は低い。
・「要約による引用」を認める裁判例がある。

このブログでは上記内容を遵守しつつ、皆さんに知って欲しい著作権を有する情報について、正しく引用してご紹介していこうと思います!
最後までお読みいただきありがとうございました!
今後ともどうぞ宜しくお願い致します。