【失神の診療】外来診療の備忘録

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こんにちは!今回は「失神」についてまとめます。
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主にプライマリケアの現場で役立つ内容です!

診療のポイント

問診で失神であるかどうか、しっかり確認しましょう。失神とは数秒から数分間の一過性の意識消失のことです。痙攣や意識障害と区別することが大切です。

最も頻度が多い病態は血管迷走神経反射です。予後は良好です。裏を返すと、典型的な血管迷走神経反射と異なる失神であった場合には、注意深く精査する必要があります。

まずは予後不良な心原性失神を除外することが最重要です。臥位(重力の影響を受けない姿勢)での発症や運動中・運動直後の発症、発症直前の胸痛・動機などの病歴を聴取した場合には、心原性失神を疑う必要があります。

次に出血や脱水による循環血液量減少による失神も見逃してはいけません。出血が疑われる場合は、腹腔内出血や消化管出血など、出血源の特定は必須です!

よく遭遇する血管迷走神経反射(Vasovagal syncope)

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採血中に倒れてしまう方がいらっしゃると思いますが、その原因がこの血管迷走神経反射です!
血管迷走神経反射が起こる状況
①立位や座位において、
②交感神経緊張状態(ストレス、痛み、過度な緊張)となると、
③前兆として自律神経症状が出現(発汗、めまい、嘔気、ふらつき、あくび)した後に、
④失神する
機序として、交感神経緊張状態による刺激が迷走神経求心枝を介して脳幹血管運動中枢を刺激し、心拍数の低下や血管拡張による血圧低下を引き起こします。結果として心拍出量低下し、引き続き脳血流が低下することで、一過性に意識消失を起こします。
特に立位や座位では下肢に血流が貯留しており、脳血流の低下を起こしやすいです。反対に臥位では、血管迷走神経反射では失神するほどの脳血流低下を起こす確率は極端に低くなると考えられますので、失神を発症した時は重力の影響を受ける体位(立位や座位)であったかどうかは、非常に重要な確認事項になると考えます。
ヘルシー
採血で失神したことがある方は、横になって実施してもらいましょう!
血管迷走神経反射は予後良好ですが、失神してしまった時に頭をぶつけるなど、外傷が問題になることがあります。前兆を自覚した場合には、すぐその場にしゃがみ込みか、可能であれば横になって足を挙上した大勢になりましょう!
メイヨークリニックのホームページでの記載が簡潔で非常に分かりやすかったので、まとめとしてご紹介します。

Vasovagal syncope (vay-zoh-VAY-gul SING-kuh-pee) occurs when you faint because your body overreacts to certain triggers, such as the sight of blood or extreme emotional distress. It may also be called neurocardiogenic syncope.

The vasovagal syncope trigger causes your heart rate and blood pressure to drop suddenly. That leads to reduced blood flow to your brain, causing you to briefly lose consciousness.

Vasovagal syncope is usually harmless and requires no treatment. But it’s possible you may injure yourself during a vasovagal syncope episode. Your doctor may recommend tests to rule out more serious causes of fainting, such as heart disorders.

引用:MAYO CLINIC ホームページ

「血管迷走神経反射は、血液を見たり過度な感情的ストレスを受けるなどをトリガーとして、体が過剰に反応することで失神する時に起こります。neurocardiogenic syncopeとも呼ばれます。血管迷走神経反射のトリガーは、心拍数や血圧を突然低下させます。その結果、脳血流は低下し、一時的に意識を失います。血管迷走神経反射は多くの場合、有害ではなく、治療も必要としません。ただ血管迷走神経反射が起こっている間に怪我をする可能性があります。あなたの主治医は心臓疾患などの深刻な失神の原因がないか、精査することを推奨するかもしれません」

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病態の概要は把握できたでしょうか?最後に血管迷走神経反射の類縁病態を簡単に確認しておきます!
神経調整性失神(neurally mediated syncope)
・血管迷走神経反射(vasovagal syncope)
・状況失神(situational syncope)
・頸動脈洞症候群(carotid sinus sundrome)
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状況失神は、排尿時や排便時、咳嗽時などの特定の状況で、迷走神経活動亢進・交感神経活動低下が起こることで発症する失神です。例えば排尿時であれば、膀胱に尿がなくなり迷走神経活動が亢進することが、トリガーとなります。
ヘルシー
頸動脈洞症候群は、ネクタイを強く絞めたり、首を伸ばしたりした時などに、意識を失ってしまう病態とのことですね。どうしてこのようなことが起こるのでしょうか?
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首元には頸動脈洞と呼ばれる圧受容体があります。ここが外部からの圧迫や刺激により反応すると、迷走神経活動が亢進します。その活動が過剰亢進であると、血管迷走神経反射や状況失神と同じように、失神してしまうことがあります。立位などの重力の影響を受ける姿勢で起こりやすいことは、他の神経調整性性失神と共通です!

見逃し厳禁の心原性失神(cardiac syncope)

予後不良な失神です。

大きく不整脈と虚血性心疾患、狭窄性弁膜症、血管疾患と分けて考えて診療しています。

まず不整脈は洞不全症候群、房室ブロックなどの徐脈性不整脈と心室頻拍や心室細動などの頻脈性不整脈です。特に徐脈性不整脈に関しては、房室ブロック(MobitzⅡ型、高度房室ブロック、完全房室ブロック)は突然死の原因となります。

ヘルシー
不整脈による失神は「Adams-Strokes症候群」という名称がついています。
アドホック
次の虚血性心疾患の代表格が急性心筋梗塞になりますが、その発症時は多彩な不整脈を合併します。正常心筋と虚血心筋の間で膜電位差が生じることで心室細動を起こすことがあります。また刺激伝導系が虚血により機能が低下することも生じることがあり、例えば房室結節を栄養する冠動脈が虚血となれば完全房室ブロックを呈することがあります。
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心血管系が絡む症状では、心筋虚血の有無の評価が最優先事項ですね!
狭窄症性弁膜症としては、比較的頻度の多い大動脈弁狭窄症が最重要です。高齢者に好発しますが、二尖弁の場合は動脈硬化の進行が早く、中年期でも発症する可能性があります。閉塞性肥大型心筋症も失神の原因となります。その他に僧帽弁狭窄症が挙げられます。肺動脈弁や三尖弁の狭窄症でも失神の原因となりますが、日常診療では頻度は低いです。
血管疾患では肺血栓塞栓症と大動脈解離の見逃しには要注意です!

出血が原因の失神も見逃してはいけない!

循環血液量が減少した状態では、体位変換時に失神することがあります。

通常は心拍出量を少しでも上昇させようと、心拍数を上昇させますので、「血圧低下+頻脈」のパターンになります。

高齢者が食思不振が続いた場合や重症な胃腸炎などで下痢や嘔吐が続いた場合など、高度の脱水状態では、失神が起こり得ます。

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そして見逃してはいけないのが、出血が原因で循環血液量が減少している場合です。
胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの消化管出血は頻度が高いです。また胃癌や大腸癌など悪性腫瘍からの持続的な出血が原因となることもあります。また肝臓癌の破裂や肝損傷・腎損傷による出血、卵巣出血や子宮外妊娠などの婦人科疾患の見逃しにも注意しましょう!
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この出血による失神(循環血液量減少)は、起立性失神というカテゴリーとして分類されています
起立性失神
・起立性低血圧
・原発性自律神経障害(パーキンソン病、レビー障害型認知症、脊髄小脳変性症など)
・続発性自律神経障害(糖尿病、尿毒症、アミロイドーシス、脊髄損傷など)
・薬剤性(降圧薬、血管拡張薬、利尿剤、抗うつ薬、アルコールなど)
・循環血液量減少(出血、脱水)

脳血管性失神について

主に椎骨脳底動脈領域の虚血による失神です。

脳底動脈の血栓・塞栓や循環不全が起こることが原因となります。

鎖骨下動脈盗血症候群は椎骨脳底動脈領域の解剖を理解する上で重要な疾患です。

下記の「めまい」の記事で解説していますので、ご参照ください。

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意外と多い!?その他の原因について

代謝性失神
・低血糖
・過換気症候群
・低酸素血症
ヘルシー
意識障害や失神なの診療時は、血糖値の測定をルーティーンにしておきましょう!
その他
・てんかん発作
・ヒステリー発作
・外傷
ヘルシー
「外傷→失神」か「失神→外傷」なのか、しっかり問診で確認することが必要ですね!

おわりに

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「失神」の診療を行う上で、最低限注意すべき点をまとめてみました
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特に「心原性」と「出血」による失神は鑑別しましょう!
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