

ワクチン総論(基礎知識)
まずはワクチンの基本的な知識を学びましょう!
総論で用語の意味を理解することで、各論が理解しやすくなると思います!
生ワクチンと不活化ワクチン
生ワクチンは生きた細菌やウイルスの毒性を弱めたものです。病気にかかった場合と同様の抵抗力を得ることができます。体内での細菌やウイルスの一過性の増殖に伴い、発熱や発疹が出現することがあります。免疫獲得までの期間は1ヶ月間ほどです。

髄膜炎菌感染症、A型肝炎、狂犬病、季節性インフルエンザ

・D:ジフテリア
・P:百日咳
・T:破傷風
・IPV:ポリオ

生ワクチン接種後は「27日以上」、不活化ワクチン接種後は「6日以上」のインターバルをとる必要があります!
定期接種と任意接種
定期接種は「予防接種法」で定めれたワクチンのことで、公費で接種することができます。
一方の任意接種は、原則として全額自己負担となります。行政が費用負担をもって推奨しているものではありませんが、使用するワクチンは厚生労働省によって法律上の認可がなされています(独立行政法人医薬品医療機器総合機構法)。

ワクチン各論(定期接種)
小児期に接種するワクチンについて整理します。

ロタウイルスワクチン(生ワクチン)
令和2(2020)年10月から定期接種となる予定です。経口接種のワクチンです。
1価ワクチン(ロタリックス®︎)は合計2回接種です。1回目は生後6週以降、2回目は4週以上の間隔をあけて生後24週までに完了します。
5価ワクチン(ロタテック®︎)は合計3回接種です。1回目は生後6週以降、2回目と3回目はそれぞれ4週以上の間隔をあけて、生後32週までに完了します。
胃腸炎を引き起こしますが、発展途上国を中心に死に至るケースもあり、ワクチンによる予防効果が重要となります。
B型肝炎(不活化ワクチン)
生後2ヶ月から生後9ヶ月までの間に合計3回の接種を行います。

具体例として、生後2ヶ月目で1回目を接種したのち、27日以上の間隔で2回目を接種し(生後3ヶ月)、3回目は1回目の接種から139日以上の間隔をおいて接種します(生後7-8ヶ月)。
将来の慢性肝炎や肝硬変、肝がんを予防します。
Hib感染症(不活化ワクチン)
ワクチン接種回数は合計4回です。
生後2ヶ月から生後12ヶ月まで基礎免疫のために3回接種し、初回接種から7-13ヶ月に追加免疫のために1回接種を行います。
具体例として、生後2ヶ月で1回目の接種を行い、27日から56日の間隔をあけて2回目の接種し(生後3ヶ月)、さらに27日から56日の間隔をあけて3回目の接種を行います(生後4ヶ月)。そして初回接種の1年後である生後1年2ヶ月で4回目の接種を行います。
インフルエンザ菌は7種類に分類されますが、その中で重症型であるb型に対するワクチンです。乾燥ヘモフィリウムb型ワクチンと呼ばれます。インフルエンザ菌は中耳炎や副鼻腔炎、気管炎、肺炎、髄膜炎などの病原細菌です。
肺炎球菌感染症(不活化ワクチン)
ワクチン接種回数は合計4回です。
生後2ヶ月から生後12ヶ月まで基礎免疫のために3回接種し、生後12ヶ月から生後15ヶ月までに追加免疫のために1回接種を行います。
具体例として、生後2ヶ月で1回目の接種を行い、27日以上の間隔をあけて2回目の接種し(生後3ヶ月)、さらに27日以上の間隔をあけて3回目の接種を行います(生後4ヶ月)。そして生後12ヶ月から生後15ヶ月までの間にで4回目の接種を行います。
肺炎球菌は子どもの細菌感染症の主な起因菌であり、細菌性髄膜炎や菌血症、肺炎、副鼻腔炎、中耳炎を引き起こします。特に重症化しやすい13の血清型に対して作られたワクチンであり、沈降13価肺炎球菌結合型ワクチンと呼ばれています。
DPT-IPV(不活化ワクチン)
ワクチン接種回数は合計5回です。なお最後の5回目は11-12歳で行いますので、乳児期〜幼児期は4回の接種を行います。
生後3ヶ月から生後12ヶ月まで基礎免疫のために3回接種し、生後12ヶ月から生後18ヶ月までに追加免疫のために1回接種を行います。
具体例として、生後3ヶ月で1回目の接種を行い、20日以上の間隔をあけて2回目の接種し(生後4ヶ月)、さらに20日以上の間隔をあけて3回目の接種を行います(生後5ヶ月)。
そして生後12ヶ月から生後18ヶ月までの間にで4回目の接種を行います。第2期として11-12歳時ジフテリア破傷風2種混合ワクチン(DT)を摂取します。
国内での患者数は0が続いていますが、アジア地域では流行することがあります。咽頭炎などを発症しますが、感染から数週間後には毒素による心筋症障害や神経麻痺を起こすことがあります。
急性上気道炎で発症します。乳児期や幼児期に発症すると、咳で呼吸ができずに重症化することがあります。また肺炎や脳炎を合併することもあります。
・破傷風(Tetanus)
土壌中の菌が傷口から人の体内に侵入することで感染します。本人が自覚しないほどの軽い刺し傷でも感染してしまいます。感染部位近辺や顎や頚部の筋肉のこわばりから始まり、病気が進行すると開口障害や発語障害、嚥下障害を認めます。強直性けいれんや横隔膜攣縮による呼吸不全から死に至るリスクもある怖い疾患です。
・ポリオ(Polio)
ポリオ(急性灰白髄炎)は小児麻痺とも呼ばれ、1960年代前半に本邦で流行していましたが、2000年に本邦を含む西太平洋地域のポリオ根絶がWHOにより宣言されました。咽頭や小腸の細胞内で増殖し、血流を介して脳・脊髄へ移行することで、麻痺を起こすことがあります。
結核(生ワクチン)
BCGの標準的な接種期間は生後5-8ヶ月です。
接種回数は1回です。
結核に対する免疫はお母さんからもらうことができず、乳幼児は結核に感染するリスクがあります。BCGは髄膜炎や粟粒結核など重症の結核感染を予防する目的で、生後12ヶ月までに受けることになっています。
麻疹・風疹(生ワクチン)
小児期に合計2回の接種を行います。
1回目の接種(第1期)は、生後12ヶ月を過ぎたところで可能な限り早期に接種します。
2回目の接種(第2期)は、小学校就学前の1年間に行います。
MRワクチンの一回の接種で大半の子どもは免疫を獲得することができますが、最初に免疫を獲得できなかった場合や経年的な免疫低下を防ぐ目的で、第2期が行われます。
0歳未満での接種では、免疫獲得が不十分と考えられています。
水痘(生ワクチン)
日本脳炎(不活化ワクチン)
ヒトパピローマウイルス(不活化ワクチン)
13歳以降、合計3回接種を行います。
ワクチンは2種類あり、どちらを使用するかで接種間隔が少し異なります。
子宮頸癌の主な原因とされるHPV16型および18型に対する抗原を含む2価ワクチン(サーバリックス®︎)と、尖形コンジローマや再発性呼吸器乳頭症の原因となる6型および11型も加えられた4価ワクチン(ガーダシル®︎)があります。
2価ワクチンを使用する場合、13歳となった日から1年間の期間で、合計3回接種を行います。1ヶ月の間隔をおいて2回接種した後に、1回目の接種から6ヶ月の間隔をおいて3回目の接種を行います。
4価ワクチンを使用する場合、13歳となった日から1年間の期間で、合計3回接種を行います。2ヶ月の間隔をおいて2回接種した後に、1回目の接種から6ヶ月の間隔をおいて3回目の接種を行います。
日本産科婦人科学会は、先進国の中で我が国においてのみ将来多くの女性が子宮頸がんで子宮を失ったり、命を落としたりするという不利益が生じないためには、科学的見地に立ってHPVワクチン接種は必要と考え、HPVワクチン接種の積極的勧奨の再開を国に対して強く求める声明を4回にわたり発表してきました。また、自治体がHPVワクチンは定期接種であることを対象者や保護者に対して告知する動きへの支持も表明いたしました。
ワクチン各論(任意接種)
季節性インフルエンザ(不活化ワクチン)
小児に対する季節性インフルエンザの予防接種は、任意接種となります。
65歳以上の方、60-64歳で心疾患などで生活が制限される方などは、定期接種となります。
発病予防効果は20-60%程度とされており、また乳幼児の重症化予防の効果が報告されています。
A型2種類(H1N1型とH3N2型)とB型2種類(ビクトリア系統と山形系統)を鶏卵を用いて増殖させ、ホルマリンで不活化したワクチンです。卵アレルギーの方への接種は注意が必要ですが、ワクチン製造の過程で卵黄や卵白に接触していないことや精製の過程で鶏卵成分が除去されていることから、アナフィラキシーの既往があるなどの重篤なアレルギーでなければ、接種は可能とされています。
おたふくかぜ(生ワクチン)
ムンプスウイルスによる感染症であり、主要な症状は耳下腺炎です。髄膜炎や脳炎、膵炎として発症することや、男性の精巣炎や女性の卵巣炎、難聴の合併など注意が必要な感染症です。
好発年齢が3-6歳であり、3歳より前に接種することが勧めれられています。一般的には、MRワクチンと同時期に第1期と第2期を接種します。

予防接種スケジュール
まとめとして、日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュールをご紹介します。
各論パートと照らし合わせながら見ていただくことで、より理解が進むと思います。
主治医と相談しながら、それぞれのワクチン毎に決められた接種回数を、決められた間隔をあけて、余裕をもって接種できるように計画を立てましょう!
集団免疫(Herd immunity)
最後に集団免疫という考え方をご紹介します。
A common implication of the term is that the risk of infection among susceptible individuals in a population is reduced by the presence and proximity of immune individuals (this is sometimes referred to as “indirect protection” or a “herd effect”).
引用:“Herd Immunity”: A Rough Guide. Clinical Infectious Diseases. 2011;52:911–916
「集団免疫という言葉の一般的な解釈は、ある感染症に対して免疫を持った人達の存在・密集により、感染しやすい人達の感染リスクを低下させることです(これは時に、間接防御効果や集団効果と呼ばれます)。」
つまりワクチンを受けた人はもちろん、大勢の人がワクチン受けて免疫持つことで、ワクチンを受けていない人など感染症に対するリスクが高い人も守ることができるということです。
感染症の流行が起こる時に頻繁に登場する用語ですので、ぜひ覚えておいてください。
おわりに

